2002 Fiscal Year Annual Research Report
有明海の流れ構造の解明と蘇生・再生のための調査研究
Project/Area Number |
14205075
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小松 利光 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (50091343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 裕昭 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (50197737)
中村 武弘 長崎大学, 環境科学部, 教授 (70039692)
西ノ首 英之 長崎大学, 水産学部, 教授 (50039723)
大串 浩一郎 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (00185232)
西田 修三 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (40172663)
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Keywords | 有明海 / 海水交換 / 流動構造 / 貧酸素水塊 / 赤潮 / 流況制御技術 |
Research Abstract |
有明海では、ノリの色落ち問題に代表されるように、ここ数年水環境の変化が水産業に大きな影響を及ぼしている。特に数年前から諫早湾内で形成される貧酸素水塊は、湾内漁場でのアサリの大量死等、周辺水域の生物環境に大きな影響を及ぼしている可能性が指摘されており、その形成機構を明らかにすることは有明海の水環境異変を解明する上での最優先課題の一つとなっている。そこで、本研究では有明海全域を対象としたこれまでの調査研究に加え、平成14年度は有明海湾奥部および諫早湾内にターゲットを絞った調査・解析を実施した。 貧酸素水塊の形成発達機構を把握するためには比較的短い時間間隔で取得された水質の空間分布の変化を明らかにする必要がある。このため本年は、諫早湾を網羅するように13ヶ所の測定地点を設け、1週間という比較的短い時間間隔で水質の現地観測を行い、諫早湾における貧酸素水塊の発生・発達の過程を捉えることを試みた。その結果、2002年は夏季における台風の襲来数が比較的多く、例年よりも貧酸素化の形成が見られにくかったものの、7月下旬に底層のDOが4mg/Lを下回る貧酸素状態が形成されていたことが分かった。これは、7月20日前後の出水による淡水流入によりと風速4m/s以下の静穏な日の継続によって比較的強い塩淡成層が形成されたことによるものと推察される。静穏な日が2日間程度継続するとDOが低下する傾向は他の期間においても確認され、諌早湾のDOは淡水の浮力のinputだけでなく風の影響も強く受けて変化することが示唆された。 また、既往の調査結果から、諫早湾の湾口に貧酸素水塊の発生源が存在し、貧酸素水塊が諫早湾前面の海域に拡がることが指摘されてきたが、本研究において実施した広域観測の結果から、有明海湾奥の西岸沿いに貧酸素化しやすい水域が存在し、そこから諫早湾内に貧酸素水塊が拡がっていくという新たなメカニズムの存在が示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 岡村 他: "有明海の水質環境特性に関する研究 1.夏季から冬季の有明海の水塊構造と貧酸素水塊・赤潮の発生の関係"2002年度日本海洋学会秋季大会. 325 (2002)
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[Publications] 安達 他: "有明海の水質環境特性に関する研究 2.有明海の流動と密度構造について"2002年度日本海洋学会秋季大会. 326 (2002)
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[Publications] 堤 他: "有明海の水質環境特性に関する研究 3.潮目の分布と水質の鉛直プロファイルから予想される有明海の海水の流動"2002年度日本海洋学会秋季大会. 327 (2002)
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[Publications] 上田 他: "諫早湾における貧酸素水塊の挙動についての現地調査"平成14年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集. 第2分冊. B18 (2003)
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[Publications] 中村 他: "諫早湾湾口部における流況の現地観測"海岸工学論文集. 第49巻. 396-400 (2002)