2002 Fiscal Year Annual Research Report
金属化合物の電子密度分布からみた化学結合の成り立ちと凝集機構の新しい表現
Project/Area Number |
14205091
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森永 正彦 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50126950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中松 博英 京都大学, 化学研究所, 助手 (00150350)
湯川 宏 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (50293676)
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Keywords | 化学結合 / 電子状態 / 分子軌道法 / 電子密度 / 軽元素 / イオン結合 / 共有結合 / 金属結合 |
Research Abstract |
本研究では、電子密度分布の規則性や特徴を見いだし、従来とは異なる立場から化学結合の成り立ちについて調べ、原子間の凝集メカニズムの簡明な表現法を開拓することを目的としている。本年度の研究から得られた結果は、以下の通りである。 (1)原子番号Zが1から9までの原子(H, Li, Be, B, C, N, O, F)を含む代表的な化合物について、第一原理のDV-Xα分子軌道法を用いて電子構造の計算を行い、これら軽原子の周りの電子密度分布ρ(r)を特徴づける化学結合パラメータを導出した。すなわち、電子密度をρ(r)=φ(r)esp(-kr)と近似することによって、指数関数的減衰項exp(-kr)のkの値と、ρ(r)の大きさを表すφ(r)を求めた。主量子数nが1および2のときのkの値は、いずれも水素様波動関数から予想される値に近かった。このことは内殻電子のみならず、最外殻電子(例:0-2s,2p)でもいえる。 (2)マリケンのpopulation analysisの計算結果は、電子密度の対数表示logρ(r)によってほぼ予想できることがわかった。例えば、COのような共有結合的な分子でも、CからOの方へ電荷移行が少し起こっていることが、logρ(r)から直接見てとれる。対数表示logρ(r)により、化学結合の特徴を視覚的に捉えることができる。 (3)結合様式が共有結合、金属結合、イオン結合に分類されている典型物質について、電子密度分布に現れる凝集機構の違いを調べた。電荷移行の観点からイオン結合と他の結合は明瞭に区別できるのが、最近接原子間のρ(r)を見る限り共有結合と金属結合の差はあまりない。実際、最近接原子間の最小の電子密度の値と凝集エネルギーの間には、共有結合、金属結合によらずほぼ直線的な関係が成り立っていることがわかった。 このように、本年度は電子密度分布から見た化学結合の成り立ちについて評価し、凝集メカニズムの特徴及び表現法について検討した。
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