2002 Fiscal Year Annual Research Report
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14205142
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Research Institution | Institute of Space and Astronautical Science |
Principal Investigator |
山上 隆正 宇宙科学研究所, システム研究系, 助教授 (40013718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 芳隆 三陸大気球観測所, 助手 (50300702)
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Keywords | 科学観測用気球 / 高高度気球 / 気球材料 / メタロセン触媒 / ポリエチレンフィルム / 気球製作方法 / 気球保持方法 / 気球放球方法 |
Research Abstract |
10kg程度の科学観測器を50km以上の高度まで飛翔させることができる科学観測用高高度気球の研究・開発を行っている。気球を高高度まで飛翔させるためには、如何に軽量で大容積の気球を開発・製作することができるかにかかっている。我々は気球の材料として、メタロセン触媒を用いることによって、世界で初めて気球環境に耐える厚さ3.4ミクロン、折径80cmのインフレーションによる新ポリエチレンフィルムの開発に成功した。このフィルムを用いて、気球製作における生産管理の向上を計るために開発した新ベルトシーラ接着機で容積6万立米(直径60m、長さ70m、重量34kg)の従来の気球重量の4分の1と大変軽量の気球の開発・製作に成功した。また、この超薄膜型高高度気球に損傷を与えず保持できる装置として、人間の手のひらと同じ効果を持つエアーバックを用いた気球保持装置の研究・開発も行った。また、気球放球方式としては、日本の様な狭い放球場でも安全・確実に放球するためにセミダイナミック放球方式を考案し、地上風の風向・風速に対応できる放球装置を開発・製作した。今回開発した容積6万立米の超薄膜型高高度気球は、2002年5月23日6時35分に宇宙科学研究所三陸大気球観測所より放球され、毎分270mの速度で正常に上昇し、高度53.0kmで満膨張に達することに成功した。今回到達した高度53.0kmは、これまでの世界最高高度51.8kmを30年ぶりに1.2km更新するものであった。この超薄膜型高高度気球の成功は、MT-135ロケットに代わる飛翔体の誕生を意味し、また、フィルムの性能、接着技術、気球保持方式および放球方式が実証されたことにより、超薄型フィルムを用いた気球のさらなる大型化の目処を立てることができた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 山上隆正: "気球における世界最高高度記録更新"ブイヤント航空. Vol.30, No.1. 4-7 (2002)
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[Publications] 山上隆正: "宇宙研の気球が高度世界記録5万3千メートルを達成"Science & Technology Journal. Vol.7. 3-3 (2002)
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[Publications] 斎藤芳隆, 山上隆正, 他6名: "超薄型高高度気球の開発IVー世界最高気球高度記録の達成ー"大気球シンポジウム 平成14年度 (宇宙科学研究所). 5-8 (2002)
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[Publications] 山上隆正: "超薄膜型高高度気球の開発"(社)計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会. 論文集(III). 213-214 (2002)
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[Publications] T.Yamagami, Y.Saito, et al.: "Development of the highest altitude balloon"34th COSPAR Scientific ballooning, October 2002. (in press).
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[Publications] 山上隆正, 松坂幸彦, 斎藤芳隆, 他: "高高度気球の開発"第17回大気圏シンポジウム(宇宙科学研究所). (印刷中).