2002 Fiscal Year Annual Research Report
クロライドチャネルの細胞死誘導機能とその活性制御メカニズム
Project/Area Number |
14207002
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
岡田 泰伸 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (10025661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RAVSHAN Sabirov 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (60322632)
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Keywords | クロライドチャネル / 細胞死 / ネクローシス / アポトーシス / 乳酸アシドーシス / 細胞容積調節 / ニューロン / グリア |
Research Abstract |
Cl^-チャネルは、神経や筋肉などの興奮性細胞においては(多くは興奮性を抑制して膜を安定化するという)"バックグラウンド"的役割を果している。また上皮細胞においてはNaClと水の分泌・吸収機能に直接的に関わっている。最近、細胞容積の調節や、細胞増殖や細胞分裂や細胞分化にもCl^-チャネルは本質的な役割を果していることが明らかにされはじめている。本研究では、これらの機能に加えて、Cl^-チャネルの新しい一般生理学的機能として細胞死誘導機能があることを明らかにしたい。 本年度は、グリア及び神経系細胞の乳酸アシドーシス性のネクローシス死の誘導と容積感受性Cl^-チャネルの関係を調べた。脳虚血においては嫌気的解糖反応の亢進によって、乳酸の蓄積と一体となったアシドーシスが伴われて、その結果、ニューロンやグリア細胞が膨張して脳腫脹がもたらされ、容積が調節されることなく膨張し続けて、それらはネクローシス死にいたるからである。実際に膨張後の容積調節に関与することの知られている容積感受性Cl^-チャネルの全細胞電流を記録すると、アストロサイト由来のC6細胞でも、神経分化後のNG108-15細胞でも乳酸アシドーシス下では細胞内酸性化が原因で著しく抑制されていることが明らかになった。乳酸アシドーシス下でのC6細胞の持続的細胞膨張は、ピロリ菌毒素ペプチドVacA投与による外来性アニオンチャネルの導入によって停止し、元の容積に回復することが次に明らかになった。更には、乳酸アシドーシスによるC6細胞生存率低下(ネクローシス死)も、VacAによって大きく防がれることが明らかとなった。これらの結果から、乳酸アシドーシスによるネクローシス死の誘導に、容積感受性Cl^-チャネルの抑制が大きく関与しているものと結論された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hara Y, Wakamori M, Ishii M, Maeno E, Nishida M, Yoshida T, Yamada H, Shimizu S, Mori E, Kudoh J, Shimizu N, Kurose H, Okada Y, Imoto K, Mori Y: "LTRPC2 Ca^<2+>-permeable channel activated by changes in redox status confers susceptibility to cell death"Molecular Cell. 9. 163-173 (2002)
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[Publications] Dutta AK, Okada Y, Sabirov RZ: "Regulation of an ATP-conductive large-conductance anion channel and swelling-induced ATP release by arachidonic acid"J. Physiol. (London). 542. 803-816 (2002)
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[Publications] Ando-Akatsuka Y, Abdullaev IF, Lee EL, Okada Y, Sabirov RZ: "Down-regulation of volume-sensitive Cl^-channels by CFTR is mediated by the second nucleotide-binding domain"Pflugers Arch. Eur. J. Physiol.. 445. 177-186 (2002)
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[Publications] Mori S, Morishima S, Takasaki M, Okada Y: "Impaired activity of volume-sensitive anion channel during lactacidosis-induced swelling in neuronally differentiated NG108-15"Brain Res.. 957. 1-11 (2002)
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[Publications] Nabekura T, Morishima S, Cover TL, Mori S, Kannan H, Komune S, Okada Y: "Recovery from lactacidosis-induced glial cell swelling with the aid of exogenous anion channels"Glia. 41. 247-259 (2003)
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[Publications] 岡田泰伸, サビロブ ラブシャン, 清水貴浩: "クロライドチャネルの新しい機能 : ATP放出と細胞死誘導"生体の科学. 53. 323-330 (2002)