2002 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の酸化ストレス応答並びに個体発生における転写伸長因子S-IIの機能
Project/Area Number |
14207097
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関水 和久 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (90126095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 貴浩 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (00323452)
秋光 信佳 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (40294962)
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Keywords | S-II / マウス / 胎生致死 / 酸化ストレス / 酸化型損傷塩基 / 転写忠実度維持 |
Research Abstract |
1.S-II遺伝子破壊個体の変異表現型 研究代表者らが樹立していたS-II遺伝子ヘテロ欠損マウスの雄雌ペアを交配し、仔マウスの遺伝子型をサザンブロット法により解析した結果、野生型個体が45匹、ヘテロ欠損個体が67匹であり、S-II遺伝子をホモに欠損する個体は存在しないことがわかつた。この結果から、S-II遺伝子はマウス胚発生に必須であると予想した。そこで、経時的にマウス胚を回収して解析した結果、S-II遺伝子をホモに欠損する個体は胎齢13.5日(13.5dpc)までは存在するが、その後は生存できずに出産までに死亡することが明らかとなった。13.5dpcのホモ欠損胚は、野生型・ヘテロ欠損型と比較して体色が白く、また肝臓の大きさが小さくなっていた。この結果から、S-II遺伝子ホモ欠損個体では胎児肝の発生、あるいは胎児肝で起こる二次造血が影響を受けており、その結果重篤な貧血により個体の生存が維持できなくなったものと考えられる。これは、転写伸長因子が血液細胞分化に必須であることを示唆した世界で初めての知見である。 2.転写忠実度維持におけるS-IIの役割 S-IIがin vivoで転写の忠実度の維持に関与するかを知る目的で、点変異を持つ1acZをレポーターとして酵母S-II変異株における転写の忠実度を解析した結果、変異体では忠実度低下していることがわかった。また、変異型S-IIによる相補実験からRNAPIIへの結合と転写中断を解除する活性をもつ変異体では忠実度維持が回復した。この結果は、S-IIがRNAPIIと結合し、転写中断を解除することで転写の忠実度を上昇させることを示唆する。また、S-II欠損株では、抗酸化剤であるN-アセチルシステインで処理した時に転写の忠実度が上昇し、酸化的ストレスを与える薬剤であるメナジオンと過酸化水素水に感受性を示した。さらに、変異型S-IIを用いた解析から、転写の忠実度と酸化的ストレス耐性の間に相関が見られた。この結果は、S-IIが酸化的ストレス耐性に必須であり、転写の忠実度を維持することで耐性を導いていることを示唆する。以上の結果から、我々は、RNA合成の校正機構は酸化的ストレス条件での生存に重要であることを提唱する。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Hossain et al.: "ICRF-193, a catalytic inhibitor of DNA topoisomerase II, inhibits re-entry into the cell division cycle form quiescent state in mammalian cells"Gene to Cells. 7. 285-294 (2002)
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[Publications] Katsuta, et al.: "Embryonic lethality of mutant mice deficient in the p116 gene"J.Biochem.. 131. 833-837 (2002)
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[Publications] Akimitsu et al.: "Enhanced cytokinesis without complete nuclear division in embryonic cells depleting the activity of DNA topoisomerase II α"Gene to Cells. (in press). (2003)
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[Publications] Fukuma et al.: "A role of the Duffy antigen for the maintenance of plasma chemokine concentrations"Biochem Biophys Res Commun. (in press). (2003)
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[Publications] Saso K., Ito T., Natori S., Sekimizu K: "Identification of a novel tissue-specific transcriptional activator FESTA as an interacting protein of the transcription elongation factor S-II"Journal of Biochemistry. (in press). (2003)