2003 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の酸化ストレス応答並びに個体発生における転写伸長因子S-IIの機能
Project/Area Number |
14207097
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関水 和久 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (90126095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 貴浩 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (00323452)
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Keywords | 転写因子 / S-II / RNAポリメラーゼII / 発生分化 / 遺伝子ノックアウトマウス / 酵母細胞 / イースト2ハイブリッド法 / 赤芽球分化 |
Research Abstract |
本研究ではまず、酵母細胞のS-II遺伝子破壊株について、転写伸長段階における忠実度を定量的に解析する系を確立した。すなわち、転写段階でミスが生じれば活性が現れるような、変異βガラクトシダーゼ遺伝子を構築し、それを含むプラスミドを細胞に導入した。その結果、S-II遺伝子破壊酵母細胞では、転写段階での忠実度が低下している、という結果が得られた。さらに、S-II遺伝子欠失酵母細胞は、過酸化水素水やメナジオンなどの酸化ストレス剤に対して感受性を示した。酸化ストレスはRNA合成反応の基質であるヌクレオチドの塩基部分を酸化反応により修飾し、転写の忠実度を下げていると考えられる。本研究で得られた結果は、S-IIはRNA合成の伸長段階で誤って取り込まれた修飾塩基を除去する反応を促進することにより、生体内の恒常性の維持において機能していることを示唆している。 さらに本研究では、我々が作出したS-II遺伝子ノックアウトマウスの表現系を解析した。その結果、ノックアウトマウスは胎児期の肝臓における赤芽球細胞の分化過程に異常を示すことが明らかになった。さらに本研究においては、胎児期のノックアウトマウスの肝臓細胞における遺伝子発現を分子生物学的手法により解析することにより、グライコフォリン等の赤血球の分化段階において特異的な遺伝子の発現以上について検討することに成功した。 さらに本研究では、酵母における2ハイブリッド法により、S-IIと相互作用するタンパク質を探索した。その結果、FESTAと命名した新規の転写因子の発見に成功した。この結果は、S-IIが臓器あるいは組織特異的に発現される転写因子と相互作用して、それぞれの臓器・組織に特異的な遺伝子発現を転写伸長段階で制御していることを示唆している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] T.Ubukata, T.Shimizu, N.Adachi, K.Sekimizu, T.Nakanishi: "Cleavage, but not read-through, stimulation activity is responsible for three biologic functions of transcription elongation factor S-II"J Biol Chem. 278. 8580-8585 (2003)
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[Publications] K.Saso, T.Ito, S.Natori, K.Sekimizu: "Identification of a novel tissue-specific transcriptional activator FESTA as a protein that interacts with the transcription elongation factor S-II"J Biochem (Tokyo). 133. 493-500 (2003)
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[Publications] H.Koyama, T.Ito, T.Nakanishi, N.Kawamura, K.Sekimizu: "Transcription elongation factor S-II maintains transcriptional fidelity and confers oxidative stress resistance"Genes Cells. 8. 779-788 (2003)