2003 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子欠損マウスを用いた大気からの変異原物質曝露の鋭敏な検出と影響評価
Project/Area Number |
14207100
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
青木 康展 独立行政法人国立環境研究所, 化学物質環境リスク研究センター, 室長 (20159297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能美 健彦 国立医薬品食品衛生研究所, 変異遺伝部, 室長 (30150890)
山本 雅之 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (50166823)
松本 理 独立行政法人国立環境研究所, 化学物質環境リスク研究センター, 主任研究員 (60132867)
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Keywords | 変異物質検出 / gpt deltaマウス / 1,6-ジニトロピレン / ディーゼル排気 / Nrf2ノックアウトマウス |
Research Abstract |
本年度はディーゼル排気中の主要な変異原物質1,6-ジニトロピレン(1,6-DNP)が体内で示す変異原性の検討をすすめた。 1,6-DNPを変異原検出用遺伝子導入動物gpt deltaマウスの肺に気管内投与したところ、低用量(0〜0.05mg)では用量に依存して突然変異頻度が増加した。 1,6-DNPはベンゾ(a)ピレン(B(a)P)よりも強い変異原性を示し、1,6-DNPの比変異原生(単位重量当たりのMF、3.1 x 10-^4MF/mg)はB(a)Pの値の約18倍であった。gpt deltaマウスに3mg SPM/m3の条件下でディーゼル排気を6ヶ月にわたり曝露した。その結果、肺中のMFは3ヶ月まで曝露期間に依存して増加した。 突然変異発生速度(Mutation rate、細胞数・1日当たりの突然変異発生数)は2.3 x 10-^7/cell x dayと算定され、肺がん発症率の推定への適用が考えられる。 突然変異スペクトルを調べたところ、ディーゼル排気を曝露した肺中では1,6-DNPに.特徴的なG:C>A:Tの塩基置換が最も高頻度に発生した。 それに対して、B(a)Pの典型的な塩基置換であるG:C>T:Aは殆ど見られなかった。 ディーゼル排気が示す変異原性の主な原因はB(a)Pではなく、1,6-DNPなどのニトロピレン類であることが示唆される。 2次代謝酵素の発現に必要な転写因子Nrf2の欠損により、突然変異頻度がどの程度上昇するかを、gpt deltaマウスとNrf2ノックアウトマウスの交配により、gpt遺伝子が遺伝子導入されているNrf2(-/-)マウスを作成して明らかにしようとしている。従来Nrf2(-/-)マウスの繁殖効率が極めて低かったが、本年度になり、投与実験を行うに充分な数の動物が確保できるようになった。 B(a)Pの肺中への投与実験を開始している。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] T.Moriguchi, H.Motohashi, T.Hosoya, O.Nakajima, S.Takahashi, S.Ohsako, Y.Aoki, N.Nishimura, C.Tohyama, Y.Fujii-Kuriyama, M.Yamamoto: "Distinct response to dioxin in an arylhydrocarbon receptor (AHR)-humanized mouse"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 100. 5652-5657 (2003)
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[Publications] H.sato, K.T.Ssuzuki, H.Sone, Y.Yamano, J.Kagawa, Y.Aoki: "DNA adduct formation in lungs, nasal mucosa and livers of rats exposed to urban roadside air in Kawasaki City, Japan."Environmental Research. 93. 36-44 (2003)
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[Publications] 青木康展: "環境から曝露される化学物質の生体影響評価-変異原物質を例として-"環境変異原研究. 25. 187-197 (2003)
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[Publications] 青木康展, 松本 理: "分子予防環境医学 環境汚染と健康リスク評価(分子予防環境医学研究会編)"本の泉社. 768 (2003)