2004 Fiscal Year Annual Research Report
異なる環境間で起こる微生物遺伝子の循環の証明-薬剤耐性・病原性遺伝子の環境中での変遷と運命を知るために-
Project/Area Number |
14208063
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
鈴木 聡 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (90196816)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千浦 博 国際基督教大学, 教養学部, 準教授 (00103698)
那須 正夫 大阪大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (90218040)
木暮 一啓 東京大学, 海洋研究所, 教授 (10161895)
中野 伸一 愛媛大学, 農学部, 助教授 (50270723)
|
Keywords | 薬剤耐性遺伝子 / ベロ毒素遺伝子 / 底泥 / 緑膿菌 / 遺伝子伝達 / ウイルス様粒子 / テトラサイクリン |
Research Abstract |
微生物は自分では地理的移動能力がないにも関わらず、同じ遺伝子が異なる環境の異なる微生物種から見つかることがある。本研究では、微生物間での遺伝子の伝達と拡散の現状把握と機構解明を目的とした。本研究では主に薬剤耐性遺伝子と病原性遺伝子を標的遺伝子とした。まず、テトラサイクリン(TC)耐性遺伝子では、これまでヒトや家畜の臨床菌でしか見つかっていなかった耐性遺伝子tet(M)が養殖魚腸内および養殖場環境に生息する海洋細菌も保有することを明らかにした。このことは、tet(M)が陸上環境と海洋環境両方に存在し、かつ、養殖場でのTCの使用頻度とtet(M)の出現頻度の相関から考えて、tet(M)は海洋中で独自に増殖していることが示唆された。海洋環境には陸上・臨床環境と同様に様々な遺伝子が存在し、異なる細菌間で伝達されていることが示唆される。次に、ベロ毒素遺伝子に関しては、O157 Sakai株のそれと同じものが河川中に常在していることが明らかになった。さらに、本遺伝子は底泥中で活発に発現しており、水中よりは底泥でファージを介したベロ毒素遺伝子の伝達が高頻度で起っていることが示唆された。以上の2つの事例から、沿岸底泥や河川底泥中が種々の遺伝子の増殖・伝達場所であることが強く示唆される。また、ヒトの病原菌である緑膿菌が海洋でも広く分布していることが明らかになり、本菌は地球上で最も広範囲に生息する生物であることが明らかになった。このような菌が陸上と海洋で遺伝子を伝達させることが考えられる。伝達ベクターとしては、非特異的にどのような微生物間でも遺伝子伝達が可能なウイルス様粒子(VLP)が発見され、tet遺伝子もこのベクターで伝達可能であることが示唆された。本研究で、同じ遺伝子が広い範囲の異なる種に分布し、それが異なる環境の微生物生態系で伝達される機構が見えてきた。
|
Research Products
(8 results)