2003 Fiscal Year Annual Research Report
1分子イメージング法による神経成長円錐ガイダンス機構の解明
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14208083
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
原田 慶恵 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 副参事研究員 (10202269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 知己 財団法人東京都医学研究機構, 研究員 (80332378)
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Keywords | シグナル伝達 / 神経成長円錐 / 可視化 / 1分子 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、10-10Mと極めて低濃度で、脊髄後根節神経細胞の発生分化や神経軸索の伸長を誘導する神経成長因子(Nerve Growth Factor、以下NGFと略)を蛍光色素Cy3で標識し、この分子が軸索先端に存在する成長円錐の運動性を活性化する際に、成長円錐内でどのような振る舞いをするのかを、1分子観察・解析してきた。本年度は、成長円錐におけるNGFのクラスター形成と、エンドサイトーシスを介した細胞内取り込みのプロセスに着目して実験をおこなった。クラスター化した蛍光NGF分子は、成長円錐の中心部にのみ観察される。成長円錐周縁部のラメリポディア上で受容体と結合した蛍光NGF分子を追跡した結果、これらの蛍光NGF受容体複合体は1分子のまま成長円錐の中心部に集められ、そこで分子同土が会合してクラスターが形成されることが明らかとなった。アクチン重合阻害剤Latrunculin Bの投与によって蛍光NGF受容体複合体の輸送が停止することから、この輸送は主として、アクチン重合を原動力とするアクチン骨格系の定常的流動によって担われている可能性が示唆された。成長円錐の中心部に観察される蛍光NGFクラスターの多くは、微分干渉顕微鏡観察で認められる膜小胞と共局在していることから、クラスター形成時かそれ以前に、蛍光NGFのエンドサイトーシスが起こっていると考えられる。そのエンドサイトーシスがどの時点で起こるのかを明らかにするために、酸性環境下で蛍光を発する蛍光色素CypHer5をNGFに標識し、これを成長円錐に投与した。その結果、内部が酸性化したエンドソームに取り込まれているNGFは、成長円錐中心部のみに観察され、ラメリポディア中にはまったく観察されなかった。このことから、ラメリポディアに存在するNGFは、すくなくとも酸性エンドソーム内には取り込まれていないことが示唆された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 原田慶恵: "生物学実験法講座「1分子生理学」DNAモーターの1分子機能解析"日本生理学雑誌. 65(7・8). 225-231 (2003)
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[Publications] 原田慶恵: "RNAポリメラーゼによるDNAの回転をみる(イメージングで解き明かす生命機能 第3回)"実験医学. 21(13). 1800-1801 (2003)
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[Publications] 原田慶恵: "熱ゆらぎを利用して動く?-モータータンパク質の新しい運動モデル-"化学. 58(11). 48-49 (2003)
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[Publications] Harada, Y.: "Studies on Biomolecules Using Single Molecule Imaging and Manipulation Techniques."Science and Technology of Advanced Materials. (in press).
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[Publications] 原田慶恵: "「生体分子の1分子イメージング」生命科学への招待(太田博道・柳川弘志編著)"三共出版. 213 (2003)
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[Publications] 原田慶恵: "「DNAモーターを測る」ナノテクノロジーハンドブックIV編 バイオ・化学へ使う 6章3(ナノテクノロジーハンドブック編集員会編)"オーム社. 213 (2003)
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[Publications] 原田慶恵: "「DNA,RNAポリメラーゼ」生物物理学ハンドブック"朝倉書店(印刷中).