Research Abstract |
歯周組織再生に於ける理想的な再生療法は,歯周靱帯と歯槽骨の再生がほぼ同時に起ることである。しかし,歯槽骨芽細胞の方が歯靱帯細胞より増殖分化が早く,現在用いられているGTR法において骨性癒着が進行する場合が多い。我々は,ヒト及びウシの歯プレセメント質に歯周靱帯と歯槽骨の再生をすみわける効果があることを発見した。既知物質としてPDGF-BB, IGF-I, TGF-β, BSPを見い出し,歯根面へ走化活性がある新規物質としてCDCFを単離し,N末端アミノ酸配列からプローブを作成し遺伝子クローニングを行った。最近,CDCF以外にトランスフェリン関連物質についても走化活性を認め検討を開始した。 実際の治療では,再生分化因子の他に,因子を徐放させる担体兼細胞の増殖分化の場としてのスキャフォールドが重要である。BSE問題でウシ皮コラーゲンが使用できなくなったため,鮭皮コラーゲン(人感染ウイルスの報告なし)を選んだ。変性温度が19度と低くバイオマテリアルとして使用不可能であったが,線維化と同時にEDC架橋する技術を開発した。変性温度は55度に上昇,強度もブタ皮コラーゲンの5倍となり,しかも歯周靱帯細胞,歯槽骨芽細胞,歯肉線維芽細胞の増殖,分化がブタ皮コラーゲンより1.3〜1.5倍優れていた。更にこの線維化ゲルはコラーゲナーゼ感受性が高く,バラバラに細胞を剥がす事無くシート状態で回収できることが判明した。細胞シートはECMを保持しており,細胞自体の増殖・分化活性はダメージを受けていなかった。即ち,歯槽骨細胞シート上に歯周靱帯細胞シートを簡単に重層することができ,ex vivoで人工歯根膜を作成し,治療に使用することが可能となった。また,マウス皮下に埋め込み生体吸収性(14日目では残存,スキャフォールドに使用可),生体親和性(7日目炎症細胞浸潤なし,14日目軽度の炎症細胞浸潤)を試験した所良好な結果を得,臨床に使用可能であることが判明した。
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