2004 Fiscal Year Annual Research Report
社会性昆虫における超個体コロニーの自己・非自己識別メカニズム
Project/Area Number |
14209013
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
佐々木 正己 玉川大学, 農学部, 教授 (40096061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 亮平 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (00111948)
岩崎 雅行 福岡大学, 理学部, 助手 (60151726)
原 健二 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (80293968)
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Keywords | ミツバチ / クロオオアリ / チャイロスズメバチ / 巣仲間識別 / 体表炭化水素 / 社会寄生 |
Research Abstract |
●ミツバチの場合:吻伸展反射連合学習系を用い,コロニー帰属性を保証するラベル物質としての脂肪酸の重要性を明らかにした.脳内に可塑的なテンプレートとして記憶される自巣のラベル情報を基に、外部入力情報を照合することで、コロニー識別が成立していることを検証する独自の実験法を考案した(佐々木ら).また,実験の精度と信頼度を上げるため,人工授精法を用い、同一遺伝子型からなる特殊実験コロニーを作出した(吉田ら). ●アリの場合:1)触角から同定した親油性物質結合タンパクの化学感覚毛内での存在を蛍光抗体法で確認した.このタンパクが触角で検出した体表炭化水素を溶解させ,化学感覚毛内のリンパ液中に同じ組成比で再現させるキャリアーとして機能し,化学受容細胞をして同巣,異巣の炭化水素組成比を識別させ,異巣アリに特異的な電気生理学的応答に結びつくことを証明した(山岡,尾崎ら).この新規な接触化学感覚器の感覚子が,100個以上の受容神経を含むことを示した(岩崎ら). 2)羽化直後の働きアリのコロニー識別成立過程解析のための行動実験系を確立し、羽化直後のコロニー識別能力の獲得と触角葉グリア細胞の発達が関連すること、コロニー識別能力獲得過程にあるアリの脳でエクジソンシグナルが働いていることを示した.また「社会脳」形成過程の形態学的、細胞生物学的解析を行った(原). ●スズメバチの場合:ホストのキイロスズメバチやモンスズメバチが、チャイロスズメバチの卵や幼虫を殺さず養育し、結果的にチャイロスズメバチの社会寄生が成立する要因として、寄生種の分泌物中にホストのコロニー識別をかく乱する物質の存在を示唆した.また、オオスズメバチが集団攻撃時に仲間との交信に使う餌場標識フェロモンに、被食者であるキイロスズメバチやニホンミツバチのコロニー識別の閾値を高める作用をみいだした(小野ら).
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