2004 Fiscal Year Annual Research Report
時代比較による乾燥地域の水資源・水利用に関する問題点の抽出
Project/Area Number |
14209020
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
中尾 正義 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (90142695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 順平 総合地球環境学研究所, 研究部, 助教授 (90195503)
加藤 雄三 総合地球環境学研究所, 研究部, 助手 (20353451)
杉山 正明 京都大学, 文学研究科, 教授 (00127094)
古松 崇志 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (90314278)
小長谷 有紀 国立民族学博物館, 民族学研究開発センター, 教授 (30188750)
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Keywords | 乾燥地域 / 水資源・水利用 / 時代比較 / 元代と現代 / 古文書 / プロクシー(代替記録媒体) / 農業と牧業 / 文系と理系の統合 |
Research Abstract |
黒城出土文書解読作業のうち、農牧類の章は終了した。内容については成果リストのうちの古松崇志(2005)に詳しく述べられている。なかでも、元代の農耕法として区田法(おうでんほう)が推奨されていたことが特記される。区田法とは乾燥地に適した畝の作り方であり、とくに、降水量が少ない地域でめ天水利用農法として優れていると思われる。この農法に関しては、元朝中央政府が推奨した文書に加えて、区田法の指導図の類も出土している。農作方法をチェックしに検査官が来ていたという文書が残っているところから考えても、実際にこの農法が黒城周辺で使われていたと考えることができる。読了した農牧類の章だけでも、示唆に富む文書が多数存在するが、それ以外に分類されている文書にも水利用やそれに関する文書があるので、来年度も他の章の文書解読は継続する予定である。たとえば、司法関連の章の中に、らくだの放牧に関する文書が残っている。読了した農牧類の章には、農業に関する記述に比べて牧業に関する記述が少ないため、司法の章に見つけたこの文書も大変貴重なものである。黒城出土文書では、水不足に悩む文書が多く、元代は、水不足の時代であったことを強く示唆している。 現在の状況に関しては、中国政府が進めている「生態移民」政策が、現地の水循環に大きく影響していることが判明した。現地で勧められている生態移民政策は、山麓部で牧業に従事している牧民をより低平地のオアシス域に移住させ、農業あるいは畜舎飼育形式の牧業へと転換させること、および、下流沙漠域の黒河沿いで放牧をしている牧民をゴビ地帯へ移住させるか、さもなくば農業あるいは畜舎飼牧業へと転換させる政策である。その結果、生業を転換した牧民は農業に従事する場合は当然、牧業を続ける場合にも飼料生産のために新たな農地を必要とし、そのために新たな水需要を生み出している。このため、彼等は新たな井戸掘削が不可欠となり、地下水くみ上げ量が急増してきている。 上記のことは、元代、現代ともに水不足という状況に直面していることを示しているが、その原因は、昨年度の成果で述べたように一様ではないと思われる。来年度は、一見同じに見える水不足という現象を、それぞれの時代における個々の要素として対比させ、自然変動と人間活動の両面から問題点を抽出したいと考える。
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Research Products
(7 results)