2005 Fiscal Year Annual Research Report
時代比較による乾燥地域の水資源・水利用に関する問題点の抽出
Project/Area Number |
14209020
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
中尾 正義 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (90142695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 順平 総合地球環境学研究所, 研究部, 助教授 (90195503)
加藤 雄三 総合地球環境学研究所, 研究部, 助手 (20353451)
杉山 正明 京都大学, 文学研究科, 教授 (00127094)
古松 崇志 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (90314278)
小長谷 有紀 国立民族学博物館, 民族学研究開発センター, 教授 (30188750)
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Keywords | 乾燥地域 / 水資源・水利用 / 時代比較 / 元代と現代 / 古文書 / プロクシー(代替記録媒体) / 農業と牧業 / 文系と理系の統合 |
Research Abstract |
本年度は特に、元代の状況復元とその整理を重点的に実施した。 元代にさかのぼる西夏時代には、流域に竜神をまつり、また、水害を減らすための努力が傾注されたなど、どちらかといえば水あまりの状態である様子が読み取れる。これに対して、元代に入ると、水不足をかこつ文書が多量に見出される。つまり、西夏から元にかけて水不足が顕在化してきている。祁連山脈から採取した氷コア分析の結果、西夏から元代にかけて次第に寒冷化して来ていたことが判明した。この時期はヨーロッパ等とはいくぶん時期的にずれてはいるが、一種の小氷期に突入した時期だと考えられる。そこで、河川流出量を氷河水文モデルを用いて確認するとともに、量的な評価を行った。その結果、気温が低下すると氷河は拡大に転じ、そのぶん河川へ流出する水量は減少することが明らかになった。つまり、西夏から元代にかける水不足は、地球規模の寒冷化の影響があるということである。 しかし、黒河中流域に現存する灌漑水路名を古文書と対照した結果、その多くのものは元代に開削されたものであることが判明した。つまり、元代に入って、中流域で大規模な農業開発が行われたことを示唆している。農業開発が活発化すれば、そのぶん黒河からの取水量は増大し、下流への流出水量は減少したであろうことは想像に難くない。事実、「上流で水を使うので、下流に水が来ない」などと記載した文書も発見された。 以上をまとめると、西夏から元代にかける水不足は、地球規模の寒冷化に起因する自然変動要因と、中流域での農業開発という人為要因との相乗効果によるということが判明した。
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Research Products
(7 results)