2004 Fiscal Year Annual Research Report
中米古代国家の形成とイデオロギー:テオティワカン「月のピラミッド」発掘調査
Project/Area Number |
14251017
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
杉山 三郎 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (40315867)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 悦夫 富山国際大学, 人文社会学部, 助教授 (40235320)
植田 信太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20143357)
|
Keywords | 新大陸考古学 / メソアメリカ / テオティワカン / 月のピラミッド / 国家の起源 / 古代計画都市 / モニュメント / 生贄埋葬 |
Research Abstract |
テオティワカンの「月のピラミッド」における2003年度の現地調査で新しい墓(埋葬体6)の存在が確認されたため、2004年度の夏現地調査は本来遺物の整理と分析を中心に行う予定を変更し、7月末から墓室内の集中的全面発掘調査を実施した。これはピラミッド自体がもつ国家遺産としてのモニュメント性、また観光拠点として調査後直ちに一般に開放する必要性から、メキシコ政府審議会と相談のうえ2004年度に墓室内調査を完了するのが最良という判断から行ったものである。墓室が想定以上に大きく、また埋葬体や遺物も多かったため、科研の予算枠で終了できず、急遽アメリカのナショナル・ジオグラフィック協会の研究基金からの援助を得て延長して行われ、最終的に同年12月に調査を完了した。内部からは12体の生贄埋葬体が後ろ手に縛られた状態で発見、うち10体は装飾品を全くつけず頭部が完全に欠けており、残りの2体の人骨は完全な形で装飾品と共に出土した。後ろ手に縛られている状態や出土状況から全て生贄埋葬と解釈している。人骨以外にはピューマや狼、鷲を含む41体の動物生贄体が完全、または不完全な形で出土しており、人体同様、供犠の一部として埋葬されたと思われる。墓室内にはその他土器、貝、黒曜石、黄鉄鉱、ヒスイ製品、有機質遺物など、ユニークな副葬品も多く伴っており、「月のピラミッド」内部で発見された7期の建築期のうち、5期のピラミッド基壇の建設を記念し、国家儀式として行われた生贄埋葬と考えられる。調査終了後、直ちに墓室とそれに続くトンネルは完全に埋め戻された。2004年度の本調査で7年間にわたるモニュメントの発掘調査は終了し、今後は必要に応じた小規模ピット発掘と測量以外は、膨大な資料と遺物の整理・分析に集中する予定である。
|
Research Products
(3 results)