2003 Fiscal Year Annual Research Report
イスラム教と接触以後の南アジア諸宗教の相互関係に関する研究
Project/Area Number |
14310011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永ノ尾 信悟 東京大学, 大学院・情報学環, 教授 (40140959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高島 淳 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (40202147)
片岡 啓 東洋文化研究所, 助手 (60334273)
斉藤 明 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80170489)
森 雅秀 金沢大学, 文学部, 助教授 (90230078)
島 岩 金沢大学, 文学部, 教授 (40115580)
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Keywords | ヒンドゥー教 / 仏教 / スーフィズム / タントラ / 密教 / 変容 / 思想交流 |
Research Abstract |
1.「不死の池」が扱う7つの主題のうち、今年度は主としてヨーガの修行法の座法と呼吸法を中心に分担して資料を収集した。座法に関してグリヒヤスートラへの補遺文献、プラーナ文献、ヨーガ文献、タントラ文献、ナータ派の文献などからさまざまな情報を得ることができた。座法全般に関する記述と並んで、30数種類の座法に関する複数の文献による記述も集め、比較することができた。呼吸法に関しては、ヴェーダ文献以来の儀礼のコンテキストにおける発展は知られていた。今年度はヴェーダ文献や補遺文献をさらに精査した。それと並んでプラーナ文献、タントラ文献、ナータ派の文献においてそれが、さらに精緻な儀礼行為として発展していったことが、今回の調査でより明らかになった。座法と呼吸法など儀礼の準備段階での記述で印(ムドゥラー)の記述も見られ、その印に関する情報をも多く集めることができた。 2.原則として各週毎の土曜日に研究協力者や大学院生に参加してもらいAmoghapasakalparajaという初期密教儀礼文献であるの講読を行った。仏教的な特徴を示すが、ポスト・ヴェーダ期の儀礼文献と本質的に類似すること、中期密教文献であるSadhanamalaやSarvatathagatatattvasamgrahaとの類似点も伺われることなど、タントラ、密教運動の形成にかんする知見を深めることができた。平成16年にも継続し、その成果を平成17年に計画している国際的な研究集会で発表することをめざす。 3.タントラ気密教文献の呪術的な記述に関する分析も開始した。ヴェーダ文献からポスト・ヴェーダ文献への移行期に属すると考えられる二つの文献SamavidhanabrahmanaおよびRgvidhanaの記述する呪術儀礼を分析し後のタントラ、密教文献の記述との比較を行った。これは座法や呼吸法などを用いた修行の結果としての超能力の検討の一環から生じたものである。修行でえられる超能力と呪術の目的がかなり重なりあっているということが明らかになりつつある。 4.今年度の資料収集として永ノ尾がウィーンとオクスフォードに、研究協力者の田中公明がネパール、インドに、同じく研究協力者の杉木恒彦がネパールに赴き、タントラ、密教関係の写本を収集した。昨年収集したものも含め写本のマイクロフィルムをCD化して、研究者に分担して分析をおこなっている。 5.これらの研究でえられた多くの情報は永ノ尾のもとに集められ、コンピュータのファイルに集め、それを各人に更に分配し、研究分析に資している。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] 永ノ尾信悟: "儀礼から見たインドの過去と現在"東大東文研編『アジア学の将来像』. 381-403 (2003)
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[Publications] 斉藤 明: "セルリンパの秘説「11の主要義」と何か"日本西蔵学会々報. 49. 3-12 (2003)
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[Publications] 斉藤 明: "Notes on the Interpretation of Bodhicaryavatara"Gedenkschrift J.W.de Jong. V. 104-106. 135-147 (2004)
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[Publications] 片岡 啓: "仏陀の慈悲と権威をめぐる聖典解釈学と仏教論理学の対立"東洋文化研究所紀要. 142. 158-198 (2003)
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[Publications] 片岡 啓: "What Really Protects the Vedas? : Jayanta on Sastra-prayojana"Journal of the Ganganath Jha Research Institute. 56. 226-251 (2003)
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[Publications] 島 岩: "印の結び方:『十六ニティヤー女神の海』第三章和訳"印度学仏教学. 18. 97-106 (2003)
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[Publications] 引田弘道: "パドゥマーヴァティー比喩物語"愛知学院大学文学部紀要. 33. 91-102 (2004)
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[Publications] 種村隆元: "インド密教におけるPratisthaの意味"東方学. 106. 123-111 (2003)
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[Publications] 榊 和良: "ナータ派研究:息の保持(Pas-I Anfas"印度哲学仏教学. 18. 107-121 (2003)
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[Publications] 杉木 恒彦: "Five Types of Internal Mandala Described in the Cakrasamvara Buddhist Literature"東洋文化研究所紀要. 144. 157-231 (2003)
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[Publications] 杉木 恒彦: "『ヴァジュラダーカ・タントラ』試訳"東京大学宗教学年報. 21(印刷中). (2003)
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[Publications] 森 雅秀: "金剛界マンダラのヒンドゥー神"小野塚幾澄先生記念論文集. 1-21 (2004)