2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14310027
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
上村 博 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (20232796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 哲哉 京都造形芸術大学, 芸術学部, 助教授 (60351368)
水野 千依 京都造形芸術大学, 芸術学部, 助教授 (40330055)
木村 直恵 学習院女子大学, 国際関係学部, 講師 (30330054)
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Keywords | 美学 / 都市 / 国際研究者交流 / フランス:ブラジル / 風景 / 画像 / 景観 / 記念物 |
Research Abstract |
今年度の本研究は全体のとりまとめと新たな問題点の把握を行ったが、主に、つぎの2点が新たな知見として得られた。 まず、ピクチャレスク的な景観は、いわゆる美術の領域で廃れた後も、広告画像や映画などで依然として再生産され、大量消費されているが、この事実は、画像の享受形態そのものが文化的な記号として物神化されていることを示している。これは近代都市という景観についても同様であり、インターナショナルで機能的な都市像は、「野蛮」「ストリート」「猥雑さ」といった概念をも馴致して自らの内に包摂しようとする「美的な」態度を顕示し、それによって可能性を浮かび上がらされる多数の潜勢的な生活の像こそが、近代都市の重層的な景観をもたらしている。 つぎに、そうした都市像の記号化と併行して、実景への関心も同時に強まってくる。すでに十八世紀から洋の東西を問わず、都市景観をあつかったデッサンや版画の流行は見られるが、十九世紀、二十世紀を通じ、写真と印刷物というメディアの普及により、都市の実景は断片の集合体として把握されるようになる。全体としては既存の画像を追認しようとする傾向が強いが、他方で、都市を画像作成者個々の努力によって描写しようとする試みが可能となったことも無視することはできない。都市に新しい意味を生み出してきたのは、そうした個別の局面に負うところが大きい。 以上については研究代表者によって夏のリオ・デ・ジャネイロの国際美学会議で報告された。 なお、上記の景観の重層性に関して、近代都市の表象形態を継時的な観点から分析する有効性が明らかになった。大規模な領域に多くの記念物を点在させる都市図のみならず、複数の画像が互いに他の全体を前提としているような場合も、何が時間軸において並列され、何が優先されているのかを弁別していくことはひとつの重要な視点を提供してくれよう。
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Research Products
(3 results)