2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14310040
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 克樹 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (70243110)
|
Keywords | 老化 / 計画 / 前頭葉 / 認知機能 / サル |
Research Abstract |
高齢化社会という言葉が問題にされてから年を経て、日本は高齢社会になった。老化に伴うさまざまな障害が社会問題となっている。本研究は、ニホンザルを対象として正常な老化に伴う認知機能の低下の特性や神経機序を解明することを目的とする。 初年度は計画していた第二の課題であるFood retrieval taskを老齢ザルと弱齢ザルに訓練して、その課題の成績を比較し、行動の特性を解析した。課題は以下のようである。サルの前に3x3のグリッド状に穴を開けたトレイを用意する。すべての穴に報酬(レーズン)を入れ、蓋で隠す。サルがいずれかの蓋を開けると一つの反応と数えた。すべての穴から報酬を取り終わるまでを1試行とし、20試行行わせた。1試行に必要な反応回数・誤反応のパターン・選択した穴の位置関係などを解析した。老齢ザルは弱齢ザルに比べ、1試行に必要な反応数が有意に多く、成績に差が認められた。また老齢ザルでは、試行の終盤、すなわち第7〜9番目の穴から報酬を得る期間における誤反応数が顕著に増加する傾向が認められた。選択した穴の位置関係を解析した結果、弱齢ザルでは9つの穴の選び方に一定の順番が認められたのに対して、老齢ザルではその傾向が弱まっていることが明らかになった。この結果は、プランニング(計画を立てる)機能が障害されていることを示唆するものである。プランニングの機能は、記憶・行動抑制・情動等とならんで前頭葉の機能であると考えられている。今回の結果も、老化に伴う前頭葉機能の低下を示すものである。また、サルでプランニングを評価する課題として、今回用いたFood retrieval taskが有効であることが示された。 これらの結果の一部は、日本動物心理学会(2002年8月)に発表し、日本心理学会(2003年予定)で発表する予定である。
|