2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14310047
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
辰巳 格 財団法人東京都高齢者研究, 福祉振興財団・東京都老人総合研究所・言語・認知・脳機能研究グループ, リーダー (40073027)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 尚子 財団法人東京都高齢者研究, 福祉振興財団・東京都老人総合研究所・言語・認知・脳機能研究グループ, 助手 (70152163)
伏見 貴夫 財団法人東京都高齢者研究, 福祉振興財団・東京都老人総合研究所・言語・認知・脳機能研究グループ, 研究員 (60260303)
石井 賢二 財団法人東京都高齢者研究, 福祉振興財団・東京都老人総合研究所・ポジトロン医学研究グループ, 助手 (10231135)
呉田 陽一 財団法人東京都高齢者研究, 福祉振興財団・東京都老人総合研究所・言語・認知・脳機能研究グループ, 研究員 (60321874)
伊集院 睦雄 財団法人東京都高齢者研究, 福祉振興財団・東京都老人総合研究所・言語・認知・脳機能研究グループ, 研究員 (00250192)
|
Keywords | 単語の想起 / 加齢変化 / 脳活動 / ブローカ野 / 単語の検索 / 具象性 |
Research Abstract |
左前頭葉後下部にあるブローカ野(BA44,45)は言葉の発話に関連し、この部位の損傷により、発話が非流暢でぎごちなくなるブローカ失語が生じることが知られている。近年の研究の中には、ブローカ野は発話運動のプログラミングに関与するとするものもある。われわれは先に単語を想起中の脳活動をPETを用いて観察したが、発話に関与すると思われる活動は、ブローカ野ではなく、左島葉前部に見られた。この結果は先行研究(Wise et al.,2000)の結果とも一致する。同時に、損傷がブローカ野に限定している場合には、必ずしもブローカ失語が生じる訳ではないとの最近の報告とも矛盾しない。 ブローカ野については、発話にかかわる活動を除いた後にも、活動が見られた。生物名や人工物名を想起する場合や、指定された音韻で始まる単語を想起する場合には、ブローカ野の血流が増加する。しかし、人名を想起する場合にはブローカ野の血流は増加しなかった。このように、われわれの研究だけからは、単語を想起する際のブローカ野の役割は明らかではない。 そこで、単語の想起に関連が深いと思われる脳イメージング研究および脳損傷例に関する多数の研究を精査した。その結果、ブローカ野、特に前方部位(BA45)に損傷がある症例では、単語の探索、とりわけ具象性の低い単語を想起することが困難なもののいることが判明し、ブローカ野があまり具象的ではない単語の探索に関与している可能性が浮上してきた。 高齢者では、単語の想起能力が低下し、若年者の75%しか単語を想起できず、若年者で観察されたブローカ野の活動が消失していた(辰巳ほか、2002)。来年度以降は、単語の想起におけるブローカ野の役割を明らかにし、加齢に伴う単語の想起困難の原因について詳しく検討する。
|
Research Products
(17 results)
-
[Publications] Fushimi T, Komori K, Ikeda M, Patterson K, Ijuin M, Tanabe H: "Surface dyslexia in a Japanese patient with semantic dementia : Evidence for similarity-based orthography-to-phonology translation"Neuropsychologia. (in press).
-
[Publications] 伊集院睦雄, 伏見貴夫, 辰巳格: "日本語における表層性失読の発現メカニズム-シミュレーション研究による検討-"神経心理学. 18,2. 101-110 (2002)
-
[Publications] Ishiwata,....Ishii, K., et al.: "Preclinical studies on [11C]MPDX for mapping adenosine A1 receptors by positron emission tomography"Annual Nuclear Medicine. 16. 377-382 (2002)
-
[Publications] Xu, B.,....Ishii, K., et al.: "Neuroimaging reveals automatic speech coding during perception of written word meaning"NeuroImage. 17. 859-870 (2002)
-
[Publications] 石井賢二: "形態画像とPETによる機能画像の比較-脳血管障害について-"MEDICAL REHABILITATION. 18. 83-90 (2002)
-
[Publications] 石井賢二: "脳神経領域におけるクリニカルPETの展望-脳変性疾患の鑑別にどこまで役立つか-"医学の歩み. 202. 381-384 (2002)
-
[Publications] 石井賢二: "加齢と痴呆における脳萎縮と脳機能低下の関係"老人病研究所紀要. 11. 24-27 (2002)
-
[Publications] 石井賢二: "広がるPETの臨床応用-脳疾患-"日経メディカル. 12. 143-146 (2002)
-
[Publications] 伊集院睦雄, 伏見貴夫, 辰巳格: "ニューラル・ネットワークによる漢字語音読のモデル"認知科学. 9,2. 187-199 (2002)
-
[Publications] 新貝尚子, 伏見貴夫: "小児失語症例における失読パターン:単語属性効果の検討による失読機序の分析"失語症研究. (in press).
-
[Publications] 辰巳 格: "加齢とコミュニケーションと脳"言語. 31,7. 42-48 (2002)
-
[Publications] 辰巳 格, 伏見貴夫, 佐久間尚子, …石井賢二, …田中正之, 権藤恭之: "単語の想起と発話にかかわる脳内ネットワークとその加齢変化"電子情報通信学会技術報告. TL2002-31. 37-42 (2002)
-
[Publications] 辰巳 格, 渡辺真澄, 種村純, 長谷川恒雄, 佐々木浩三: "動詞の活用語尾と語幹末音素が保たれたジャーゴン失語-動詞の活用に「規則処理/例外処理」は必須か?-"平成9〜12年度科学研究費補助金 特定領域研究(A)研究成果報告書「心の発達:認知的成長の機構」. 399-411 (2002)
-
[Publications] 辰巳 格: "認知神経心理学的アプローチ 鹿島晴夫、種村純編「よくわかる失語症と高次機能障害」"医学書院(印刷中).
-
[Publications] 伏見貴夫, 伊集院睦雄, 辰巳 格: "読み書きの認知モデル 宇野彰(編著)「高次神経機能障害の臨床-実践入門-」"新興医学出版社. 123 (2002)
-
[Publications] 辰巳 格: "ここまで来た認知神経心理学 宇野彰・波多野和夫編『高次神経機能障害の臨床はここまで変わった』"医学書院. 166 (2002)
-
[Publications] 辰巳 格: "あれが、あれして、あれだから・・・ 歳とともに変わることばと脳 桐谷 滋編『心の発達、ことばの発達-子どもはなにをどのように学ぶのか』"クバプロ. 151 (2002)