2004 Fiscal Year Annual Research Report
発達早期における視線および表情理解の発達と障害:社会的参照行動の再検討
Project/Area Number |
14310061
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 利彦 京都大学, 教育学研究科, 助教授 (90242106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板倉 昭二 京都大学, 文学研究科, 助教授 (50211735)
橋彌 和秀 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 助教授 (20324593)
小沢 哲史 岐阜聖徳学園大学, 短期大学部, 講師 (50369526)
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Keywords | 乳幼児期 / 初期コミュニケーション / 三項関係場面 / 主観的状態の読み取り / 養育者による注意操作 / 心理的語彙 |
Research Abstract |
本研究の目的は、発達早期における子どもの原初的コミュニケーション行動および心的理解成立のプロセスとメカニズムを、他者の視線と表情の理解を前提とする社会的参照行動(social referencing)に着目して、精細に解明することである。特に、本研究では、この社会的参照を子ども個人に閉じた個体内現象とは見なさず、養育者とのやりとりの中で生起する個人間現象あるいは関係的現象と見なし、その成立や高次化に絡む養育者の役割をも明らかにしたいと考えた。より具体的には、小沢・遠藤(2001)の理論モデルに従い、社会的参照行動が巻き込まれ型(子どもが一方的に養育者の情動に巻き込まれて対象に対する行動を変える)から相互交渉型(子どもの情報探索行動とその子どもの注視点に配慮し適切な情報付与を行おうと意図する養育者の働きかけとの相互交渉の結果成り立つ)を経て、最終的に自律型(子どもが養育者の表情をいわば「盗み見て」それを自己の行動調整に活かす)へと至るという発達プロセスの検証を行うこととした。今年度は、一組の母子(2004年7月時に生後10か月)に日誌法による縦断的な行動記述を依頼し、この理論モデルが概ね妥当であるとの結論を得た。また、昨年度からの継続で37組の母子を対象とした縦断的な実験観察を生後12か月時と18か月時に実施し、子どもが生後6か月段階における養育者の子どもの主観的状態の読み取りおよび心的帰属傾向の高さが、共同注意あるいは社会的参照場面での、子どもの注意操作の仕方にある程度関与する可能性を明らかにした(養育者が子どもの視線方向に自らの注意を添わせやすい)。しかし、今回の相互作用での観察では、昨年度(生後6か月時点)の結果とは異なり、そうした養育者の主観的状態の読み取りの高さが、心理的語彙の使用の豊かさを予測するものではなかった。
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Research Products
(8 results)