2005 Fiscal Year Annual Research Report
流域社会の比較社会学-河川と流域社会の共生にむけて-
Project/Area Number |
14310078
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 重好 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50155131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田渕 六郎 名古屋大学, 環境学研究科, 助教授 (20285076)
横田 尚俊 山口大学, 人文学部, 助教授 (10240194)
山下 祐介 弘前大学, 人文学部, 助教授 (90253369)
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Keywords | 流域社会 / 河川環境 / 治水 / 利水 / 所有・管理・利用 / 公共性 |
Research Abstract |
河川の比較社会学のテーマの下に、大別して二つの研究を進めてきた。 第一は、日本の河川全体を規定する社会的な制度に関する研究である。河川は、河川をめぐる社会的な制度によって、そのあり方が規定されている。明治以来、河川は、「官地」であり、「自然公物」として規定されてきた。そのため、河川と流水の公的所有の下に、河川は「官」(国家)によって管理されてきた。その結果、国家による河川管理という体制の下で、流域住民自身が河川管理の「客体」となり、河川から遠ざかって行った。そのことは、河川利用から河川のあり方を管理する方式が消滅し、河川環境の悪化をもたらした。河川は本来の「公」としての意味を失った。現在、河川を利用という立場から位置づけなおすことが求められており、本来の「公物」としての意味を回復することが必要である。そうしたときに、河川環境の回復も期待できる。 第二の研究は、個別的な河川について、流域社会の社会変動と河川の変化を関連付けて実証的に研究し、さらに、河川間の比較を行うことである。 具体的には、青森県の岩木川、東海地方の長良川、熊本県の白川を対象として、各流域社会の社会変動を研究し、その過程の中での、河川の治水、利水、環境の変化を検討した。 さらに、三つの河川流域の住民を対象としたアンケート調査を実施し、河川とのかかわり、河川の各側面の評価、河川行政の評価、今後の河川行政のあり方に関して調査を行った。 以上の研究の主要なファインディグスを箇条書きにすれば、(1)明治以降の激しい地域の社会変動に連動して、河川の治水・利水・環境が大きな変化を遂げてきたこと、(2)治水・利水は地域社会の開発との循環的関係にあり、開発が進むほど治水・利水は徹底され、治水・利水工事が進むほど、開発が行われてきたこと、(3)その結果、流域住民は「川離れ」を起こしたが、近年の、河川環境への関心の高まりによって、河川への回帰のキッカケが生まれてきたこと、(4)三つの河川ごとに、河川のかかわりや意識が異なること、などが明らかになってきた。
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Research Products
(3 results)