2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14310092
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
田代 英美 福岡県立大学, 人間社会学部, 助教授 (80155069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 美佐恵 久留米大学, 文学部, 非常勤講師 (60142626)
佐藤 繁美 福岡県立大学, 人間社会学部, 助手 (80254647)
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Keywords | 初期生活研究 / 都市社会学 / 企業経営思想 / 大原孫三郎 |
Research Abstract |
1.1930年代までの大原社会問題研究所に関わりを持った社会学者としては、米田庄太郎、新明正道、戸田貞三が挙げられる。新明、戸田の関わりはごく短期間で大原社会問題研究所からみると小さなエピソードに過ぎないと言える。これには偶然的な要素とともに基本的な社会観・イデオロギーと社会分析の方法論の相違が大きく作用していたと考えられる。また、米田は今日ではほとんど忘れられた社会学者であるが、米田門下生が大阪・京都の生活調査を担ったことは初期生活研究の中で特筆に値する。2.大原社会問題研究所を含め初期生活調査・生活研究は、都市問題への基本的認識やテーマの設定を開拓すると同時に都市生活の解明に膨大なモノグラフを残しており、都市社会学の源流としての役割は正当に位置付けられるべきである。たとえば磯村英一は、さまざまな調査や都市行政を通して、大原社会問題研究所の研究や研究員と直接的・間接的に交流があり、その業績は初期生活研究の特徴(「都市」や「労働者」、「社会病理」などに対する問題意識の鋭さや理論的枠組みの未完も含めて)を最もよく引き継いでいると思われる。3.大原孫三郎の企業経営と社会思想に関して、今期明らかにしたのは、大原孫三郎の経営の中核となる巨大地主としての大原と近代産業の紡績会社社長としての大原の経営理念と社会思想である。その思想の鍵は、孫三郎が設立した大原農業研究所(大原奨農会)、社会問題研究所、労働科学研究所や石井十次記念愛染園等の石井十次関連の社会事業を通して見えてくる徹底した科学尊重主義である。これまでキリスト教社会主義者等とカテゴリー化されてきた孫三郎の経営理念、思想の実像を科学という新たな側面から明らかにした。
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