2002 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における社会階層、ライフスタイル、社会関係資本の連関構造の分析
Project/Area Number |
14310107
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
与謝野 有紀 関西大学, 社会学部, 教授 (00230673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 嘉倫 東北大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (90196288)
都築 一治 流通経済大学, 社会学部, 教授 (20180028)
林 直保子 関西大学, 社会学部, 助教授 (00302654)
岩間 暁子 和光大学, 人間関係学部, 助教授 (30298088)
三隅 一百 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助教授 (80190627)
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Keywords | 社会階層 / 社会関係資本 / 信頼 / 社会的ネットワーク / 地域社会 / 社会的弱者 / 職業選択 |
Research Abstract |
本年度は、文献研究、数理解析、シミュレーション実験、および郵送調査をおこなった。文献研究から、信頼、一般的信頼、安心の諸機能、および概念の再整理の可能性が示唆され、既存の理論的考察の問題点が明らかにされた。数理解析からの理論的展開の可能性としては、階層構造の内面化プロセスおよびその社会構造維持機能の解析が、べき乗則との関連でモデル化され、東アジア型の社会構造について数理モデルからの考察がなされた。また、シミュレーション研究からは、信頼が社会の中に醸成されていく前提として、北イタリアにおいて観察されたような中間集団の役割が重要であることが知見として導出された。より具体的には、いくぶんかの社会移動が社会に存在し、中間集団の中で信頼のシードが生み出されると、そのシードを核として社会全体の信頼感が醸成され、かつ社会的効率が上昇することが明らかにされた。実験および郵送調査からは、信頼と社会的知性に関する既存の理論、実証の結論の根本的な問題が明らかにされるととともに、理論的な再倹討の前提となるデータが得られた。具体的には、相手の人格を見極める能力に優れた高信頼者と人間関係に認知資源を投入する低信頼者という図式がデータによって反証された。低信頼者も高信頼者同様に人格情報に対して敏感であり、基本的に高信頼者と低信頼者は対称な認知、反応構造を有していることが明らかになった。さらに、低信頼-ポジティブ情報敏感、高信頼-ネガティブ情報敏感という信頼戦略ともいえるものが存在し、これが適応的であることが検討された。さらに、大学偏差値と一般的信頼感の強い正の相関という既存の知見も、再調査の結果否定され、信頼をめぐる議論の根本的見直しの必要性が決定的に明らかになった。
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