2004 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における社会階層、ライフスタイル、社会関係資本の連関構造の分析
Project/Area Number |
14310107
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
与謝野 有紀 関西大学, 社会学部, 教授 (00230673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 直保子 関西大学, 社会学部, 助教授 (00302654)
都築 一治 流通経済大学, 社会学部, 教授 (20180028)
三隅 一百 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助教授 (80190627)
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Keywords | 社会階層 / 社会関係資本 / 信頼 / 社会的ネットワーク / 地域社会 / 中間集団 / 社会関係基盤 |
Research Abstract |
本年度は、前年度1月に近畿2府5県で実施した社会関係資本、階層、ライフスタイルに関する調査データの解析を中心として研究を遂行したが、それと並行しながら、前年度の実施の実験データの解析、コンピュータ・シミュレーション、フィールドワークおよび理論研究を実施し、以下の知見を得た。(1)前年度までの理論的検討を受け継ぐ形で、社会関係資本の3要素(信頼、ネットワーク、互酬性の規範)のうち信頼をキーとして統一的な概念整理が可能であることを理論的に明確化した。(2)前記の理論研究を受け、社会関係資本の主要素として一般的信頼感に焦点を絞って解析した結果、信頼の生成メカニズムに関する現行の主要理論(「信頼の解き放ち理論」)のプロセスは、日本では一切確認されなかった。(3)さらに、一般的信頼感の生成のためには、近隣ネットワーク、自主的な参加を前提とするクラブへの参加など、中間集団に対するコミットメント関係の形成が重要であり、これらの中間集団において醸成された個別的な信頼感は、他者一般に対する信頼感を形成する重要な基礎となることが確認された。この知見については、近畿圏での調査データの共分散構造分析モデルによる解析と、コンピュータ・シミュレーションによる解析において、同時に確認されており、頑健性が高い。(4)社会関係資本の概念は投資の視点が欠落しているとのArrowらの批判に対応する形で、社会関係資本の形成のための投資と回収のプロセスを、「社会関係基盤」という新たな概念に定式化し、さらに近畿調査データを用いて、人々の所有する社会的諸資源と社会関係基盤の連関構造を実証的に明らかにした。この実証分析の結果、社会関係資本は、高資源者の地位の保全に機能し、階層移動を阻害する要因として働きうるとともに、低資源者にたいするセーフティーネットとしても同時に機能することが明らかとなった。(5)また、社会関係基盤については、フィールドワークからも投資、回収概念の高い適用可能性が確認された。
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Research Products
(5 results)