2003 Fiscal Year Annual Research Report
近現代西洋史における「第三の道」論の史的展開に関する研究
Project/Area Number |
14310176
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
南塚 信吾 千葉大学, 文学部, 教授 (50055315)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
我孫子 誠男 千葉大学, 法経学部, 教授 (20115520)
岩田 昌征 千葉大学, 法経学部, 教授 (60125284)
小沢 弘明 千葉大学, 文学部, 教授 (20211823)
御子柴 道夫 千葉大学, 外国語センター, 教授 (10219610)
雨宮 昭彦 千葉大学, 法経学部, 教授 (60202701)
|
Keywords | 第三の道 / A.ギデンズ / グローバリゼーション / 社会主義 / ヨーロッパ / イギリス / 東欧 / キリスト教 |
Research Abstract |
本年度は、主にヨーロッパの社会主義において、グローバリゼーションとの関係で政治・経済の体制について提起されている「第三の道」論を歴史的に検討する作業を行なった。それは、イギリス労働党のイデオローグであるA.ギデンズの『第三の道』に象徴される考え方であり、グローバル化する時代において、資本主義的市場経済と私有財産という自由主義的民主主義の原則と、平等と共同体と福祉への社会主義的な関心とを「妥協」させようという考えである。この考えは、イギリスの労働党のほか、ドイツなどヨーロッパの社会民主党、さらにはオーストリアの社会主義政党にも広がった。 本研究では、このようなギデンズ的な「第三の道」について、世界的な規模で展開されている議論を整理検討した。一方では、これを現代の社会主義にとって重要な意義のあるものとして受け入れる議論が、多くの著作となって現れている。他方、この考えを「妥協的」であるとする社会主義者の著作も著されている。それは、ギデンズ流の考えでは、グローバリズムのもとで進行する世界的な規模での、構造的な格差を是正できないからであるという。 この論争に関しては、社会主義が1989年以後に残した「遺産」を現実的に検討することも必要であるという観点から、2003年12月に「東欧における社会主義の遺産とグローバリゼーション」というテーマの国際シンポジウムを開催し、社会主義体制崩壊後の「第三の道」の意義を議論した。 今後の課題としては、(1)この考えの歴史的起源について検討すること。普通は1989年前後の東欧に求められるが、実際にはさらに遡って1920-30年代のドイツや東欧に求めるべきであると考えられる。(2)カトリック世界から提起されている「第三の道」論を検討する課題が残っている。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 南塚 信吾: "グローバリゼイションと「第三の道」:東欧から考える"東海大学史学会. (現在校正中). (2004)
-
[Publications] 雨宮 昭彦: "グローバリゼーション、欧州統合とコーポラティズムの再建"廣田功他編「ヨーロツパ統合の社会史」. 175-216 (2004)
-
[Publications] 我孫子 誠男: "<資本主義の多様性>論と<社会的生産システム>論(上)"千葉大学経済研究. 18-4. 113-144 (2004)