2003 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭の日本におけるメディア革命の比較文化理論的研究
Project/Area Number |
14310215
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
和泉 雅人 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (40159801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
識名 章喜 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (30162580)
FURNKAS Josef 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (40306858)
前田 富士男 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (90118836)
平田 栄一朗 慶應義塾大学, 文学部, 助手 (00286600)
大宮 勘一郎 慶應義塾大学, 文学部, 助教授 (40233267)
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Keywords | 国際研究者交流 / メデイア美学 / 文化人類学 / テクノロジー表象 / モデルネ / バウハウス / 演劇表象 / 映像研究 |
Research Abstract |
平成15年度における研究活動は、当初の計画通り、ドイツ・ジーゲン大学におけるシンポジウム開催を中心として行われた。このシンポジウムは黒澤明監督の作品解釈をメインテーマとし、映画表象における日本像の分析とその受容をサブテーマとし、平成15年11月末の三日間にわたって開催された。さらに同月24日には、フランクフルト映画博物館においても黒澤作品の上映とシンポジウムを開催した。日本側からは和泉雅人、識名章喜が、プロジェクトを代表して参加した。識名はInszenierte Schlacht-Statik und Dynamik in Kriegsszenen bei Krosawa Akiraと題して発表を行い、和泉は最終日の元黒澤組スタッフによるシンポジウムの司会を行った。日本側からの参加者は、映画評論家の佐藤忠男、黒澤プロダクションの野上照代、美術監督の村木与四郎、映画監督の出目昌伸という黒澤映画のみならず日本映画界を代表する顔ぶれであり、ドイツで最初の黒澤シンポジウムがドイツの映画研究に与えた影響は小さくない。また野上氏の協力によりジーゲン大学図書館で黒澤明展を開催した。映画メディアによる文化受容においても、ステレオタイプ的な先行イメージがいかに支配的であるか、という事実認識が得られたことは日本側参加者にとっても大きな収穫であった。上記シンポジウムを除いた他の研究実績に関して言えば、4、5月の段階でドイツ側の研究代表者の一人でもあるプファイファー教授が日本学術振興財団の招きで来日し、日本近代におけるヨーロッパ文化の受容について、主に芥川龍之介と永井荷風を例として和泉らとワークショップを開催した。各研究分担者の今年度の活動に関して言えば、前田はいわゆる高級-美術作品と低級-大衆文化メディアとの交錯という現代美術に特有な図式状況を広告理論から読み解く試みを行い、識名は最近のドイツ語圏文学におけるサイエンス・フィクションの新しい展開に注目し、科学技術やメディア技術を表象する文芸的手法が、娯楽文学におけるSF映画の影響を受けながら、近年若い作家世代において実り豊かな成果をあげている現状を分析しつつある。大宮は「メディア革命」の政治的位相に着目しつつ、これに関する論考を発表したが、さらにメディアと記憶というテーマにも関心を広げつつある。フュルンケースはニュー・メディアによる人間の記憶の変容についてエリアス・カネッティを例として分析し、その成果は近々2編のモノグラフィーとして発表される予定である。平田はマルチメディア・パフォーマンス集団ダム・タイプがメディア技術を積極的に取り入れて、その魅力や可能性を存分に表現しつつも、逆にメディアが人間身体や精神にもたらす弊害を浮き彫りにする方法について分析をおこなった。和泉はこれらの各研究者間の情報交換と方針の調整をおこないつつ、自らのテーマであるバウハウス受容について本年5月に発表予定の論考を準備中である。
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Research Products
(26 results)
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[Publications] 前田 富士男: "ノグチ・ルーム/第二研究室の保存問題-慶應義塾大学三田新校舎建設計画をめぐって"慶應義塾大学アート・センター年報. 10. 10-21 (2003)
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[Publications] 前田 富士男(編): "コンステレーションとしての造形-1930年のクレーとアルプ"伝統と象徴-美術史のマトリックス(沖積舎刊). 139-166 (2003)
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[Publications] 前田 富士男: "クレーとベックマンにおける神話的ノーテーション-墜落/飛行と男性/女性"慶應義塾大学アート・センターブックレット『芸術のロケーション』. 11. 17-42 (2004)
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[Publications] 前田 富士男(口頭発表): "クレーと色彩"日本パウル・クレー協会、渋谷. (2003)
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[Publications] 前田 富士男(口頭発表): "ゲーテとオストヴァルト"シンポジウム「ゲーテと物理学者たち」ゲーテ自然科学の集い、京都大学. (2003)
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[Publications] 前田 富士男(口頭発表): "ドイツ・色彩の大河-ゲーテからクレーの時代へ"「ゲーテ色彩論」研究会、日本色彩学会関東支部・目白クラブ主催、目白デザイン専門学校. (2003)
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[Publications] 前田 富士男(口頭発表): "表現主義美術のトポロジー-欲望との距離"「人と欲望」シンポジウム、日本学術会議哲学系、東京・日本学術会議. (2003)
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[Publications] 識名 章喜(口頭発表): "Inszenierte Schlacht - Statik und Dynamik in Kriegsszenen bei Krosawa Akira"Symposium "Akira Kurosawa und seine Zeit"ドイツ・ジーゲン大学. (2003)
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[Publications] 識名 章喜: "ドイツSF最新事情 ローダンの呪縛を脱した三作家"SFマガジン 異境からの物語-非英語圏SF特集. 10月号. 53-56 (2003)
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[Publications] 識名 章喜(翻訳): "マルクス・ハマーシュミット:暴風監視官"SFマガジン 異境からの物語-非英語圏SF特集. 10月号. 42-52 (2003)
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[Publications] 識名 章喜(翻訳): "フランツ・ロッテンシュタイナー:情報の海のロビンソン"SFマガジン スタニスワフ・レム特集. 1月号. 63-70 (2003)
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[Publications] 大宮 勘一郎: "ラクー=ラバルトと反復されるドイツ"未來. 12月号. 12-17 (2003)
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[Publications] 大宮 勘一郎: "アンティゴネー・マシーン"未來. 3月号. 1-7 (2004)
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[Publications] 大宮 勘一郎: "Heinrich von Kleists "Die Herrmannsschlacht"-Eine Genealogie des (modernen) Kriegs-Diskurses"Neue Beitrage zur Germanistik(日本独文学会学会誌)Munchen. 印刷中. (2004)
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[Publications] 大宮 勘一郎(翻訳): "フローリアン・クラマー:Exe.cut[up]able statements:ユーザー・インターフェイスへと急浮上するコード"季刊「InterCommunication」. 47号. 14-23 (2003)
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[Publications] 大宮 勘一郎(口頭発表): "ベンヤミンにおける反復としての記憶"精神病理コロック、於グリーンホテル水道橋. (2004)
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[Publications] 大宮 勘一郎(口頭発表): "Celans Pop"日本独文学会主催文化ゼミナール"POP? Praktiken kultureller Grenzverwischungen"於アートランドホテル蓼科. (2004)
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[Publications] 平田栄一朗: "Dumb Types mediale Strategie"藝文研究(慶應義塾大学). 85号. 241-252 (2003)
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[Publications] 平田 栄一朗(口頭発表): "Dumb Types Popasthetik"日本独文学会主催文化ゼミナール"POP? Praktiken kultureller Grenzverwischungen"於アートランドホテル蓼科. (2004)
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[Publications] 平田 栄一朗(書評): "ハンス=ティース・レーマン『ポストドラマ演劇』"ゲルマニスティネンの会「Flaschenpost」. 24号. 26-26 (2003)
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[Publications] 平田 栄一朗(批評): "「性格なき」中国人の豊かな個性-ブレヒトと林兆華の身振り"シアター・カイ「批評通信」. 3月号(印刷中). (2004)
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[Publications] 和泉雅人: "Chilin und das japanische Altertum"Neue Beitrage zur Germanistik(日本独文学会学会誌)Munchen. 印刷中. (2004)
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[Publications] 和泉雅人(共著): "A・シュヴェーグラー『西洋哲学史』への鴎外自筆書き込み-翻刻および翻訳"藝文研究(慶應義塾大学). 86号(印刷中). (2004)
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[Publications] 和泉雅人(講演): "聖なる獣としての一角獣-その象徴と伝播"ブリジストン美術館土曜講座. (2004)
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[Publications] ヨーゼフ・フュルンケース: "A・シュヴェーグラー『西洋哲学史』への鴎外自筆書き込み-翻刻および翻訳"藝文研究(慶應義塾大学). 86号(印刷中). (2004)
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[Publications] 平田 栄一朗(共著): "『文学の子どもたち』(平田担当 第7章「劇的な子ども」)"慶應義塾大学出版会. 209-226 (2004)