2004 Fiscal Year Annual Research Report
いわゆる近隣政府ないし都市内分権制度と基礎地域組織との関係に関する法社会学的研究
Project/Area Number |
14320004
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
名和田 是彦 東京都立大学, 法学部, 教授 (30164510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高村 学人 東京都立大学, 法学部, 助教授 (80302785)
岡田 章宏 神戸大学, 発達科学部, 助教授 (70185429)
宗野 隆俊 滋賀大学, 経済学部, 助教授 (60324563)
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Keywords | 近隣政府 / 都市内分権 / 地方自治 / コミュニティ / 地域組織 / NPO |
Research Abstract |
近年学問的にもまた実践的にも注目されている「近隣政府」ないし「自治体内(都市内)分権」を、制度と、それを支える地域社会の基礎的な組織のあり方(例えば日本では自治会・町内会や様々なボランティア団体などの存在)とを関連させてとらえる試みを行なった。日本では、横浜市港南区でアクションリサーチ的研究を行なったほか、神戸市長田区の真野地区のまちづくり活動を視察した。また、分担してドイツ、フランス、アメリカ、イギリスに調査におもむいた。おおむね次のような知見ないし仮説が得られた。 (1)日本については、2003年11月の地方制度調査会答申に提案された「地域自治組織」をめぐって都市内分権がさかんに議論されたが、自治体レベルでは既に1990年代から、コミュニティ・レベルの公共サービス組織を強める試みが行われてきた、ととらえられる。これは特に「協働」という概念で語られている。こうした背景が、都市内分権の日本独自の様相をもたらしていると思われる。 (2)フランスでは、つい最近(2000年)に近隣政府に関する立法が行われたが、今年度もその実際の機能を引き続きパリを中心に観察した。地区ごとにかなり様相が異なることがわかった。 (3)ドイツでは、既に定着した都市内分権の仕組が、連邦議会の提唱になる「市民活動論(burgerschaftliches Engagement)」に見られるような「社会国家」の再編と連動して、変化の兆しが見られる。その方向性は基本的に日本と同様「協働」型の社会づくりに向かっているが、どこまで社会国家の解体が進むのかは今のところ不透明である。調査地ブレーメンでは、ドイツの基礎地域組織である政党の活動家たちの発想が旧態依然としていることから必要な改革が進まない様子が窺える。 (4)イギリスでもつとに福祉国家の再編がかなり進んでおり、「契約文化」が定着しているが、これがさらに進行しているようである。今年度はロンドンのいくつかの地域で聞き取り調査を行なった。 (5)アメリカはもちろん福祉国家型の社会づくりをしていないので、地域社会の側がCDCなどを通じて独自の、「政府」といってもいい機能を持つ包括的な地域経営を行っており、こうした事態はアメリカ特有の政治文化に根拠を持っているようである。
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Research Products
(3 results)