2003 Fiscal Year Annual Research Report
組織間学習としての技術移転プロセスの組織生態学的実証研究
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14330032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新宅 純二郎 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (00216219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 剛 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (00334300)
桑嶋 健一 筑波大学, 大学院・ビジネス科学研究科, 助教授 (50313086)
高橋 伸夫 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (30171507)
立本 博文 東京大学, 先端科学技術研究センター, 科学技術振興特任教員(研究職) (80361674)
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Keywords | 大学発ベンチャー / ユーザー・イメージ / インキュベータ / 支援要因 / 見極めプロセス / 技術シーズ / 特許 / 知的財産権 |
Research Abstract |
今年度は、大きく3分野での調査研究を行った。 (1)大学からの技術移転の事例として、東京大学周辺におけるベンチャー企業10社を対象としたインタビュー調査を行った。その結果、技術シーズはあるものの結局どのような形=製品になるのかという話になると、曖昧な答えに終始する企業が多く、ユーザー・イメージに欠けるために会社としては深刻な事態に陥っているケースが多いことが分かった。 (2)日本最大のハイテク・インキュベータ「かながわサイエンスパーク」(KSP)入居ベンチャーの調査を行った。KSPは1989年11月の開業から2002年11月時点まで、入居企業累計188社という支援実績を誇り、しかも支援方針が時期によって変化し、支援要因の組合せは実に13通りにもなる。そこで、入居企業の成功率に対する支援要因の影響を統計的に分析して、事業の成否を分ける要因を抽出した。更にヒアリング調査の結果、これらの要因はKSPの暗黙知的な2段階の「見極めプロセス」を構成していた。すなわち(1)入居審査時に経営者とビジネス・プランを見て、経営者と事業のポテンシャルを見極め、(2)入居後平均2年弱、長くて4年程度その仕事振りを見て、技術シーズというよりは広い意味での技術力と経営者の力量を見極めるというものである。このうち(b)の証拠として、入居当初とは別の技術シーズに乗り換えて成功したケースすら存在する。 6)特許等の知的財産権を中心にして、技術移転プロセスに関する制度や実態の調査を行った。技術移転にはライセンシングに限らず様々なパターンがあるが、大学を中心とした技術移転、特に大学発ベンチャーには発明をビジネスとして扱う発想が乏しいことが明らかになった。 こうして全体として、今ある技術シーズよりも、広い意味での技術力やビジネス面での経営者の力量が、技術移転の成功にとって大きな鍵であることが分かってきた。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] 松本渉, 高橋伸夫: "NPOの組織評価軸-助成のための外部評価の事例から-"The Nonprofit Review. Vol.2,No.2. 131-143 (2002)
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[Publications] 高橋伸夫: "日本の海運会社の定期航路部門とコンテナ化"赤門マネジメント・レビュー. Vol.2,No.2. 83-105 (2003)
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[Publications] 高橋伸夫: "ぬるま湯的体質の研究が出来るまで"赤門マネジメント・レビュー. Vol.2,No.6. 247-277 (2003)
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[Publications] 高橋伸夫: "日本型年功制の再評価-賃金の成果主義をどう考えるか-"赤門マネジメント・レビュー. Vol.2,No.8. 339-365 (2003)
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[Publications] Takashi Shimizu, Nobuo Takahashi: "Note on complete proof of Axelrod's Theorem"Annals of Business Administrative Science. Vol.2,No.4. 39-46 (2003)
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[Publications] 高橋伸夫, 中野剛治: "技術移転の考え方"赤門マネジメント・レビュー. Vol.2,No.10. 481-529 (2003)
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[Publications] 新宅純二郎: "アーキテクチャ論から見た中国との分業"JMCジャーナル. Vol.51,No.10. 2-7 (2003)
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[Publications] 新宅純二郎, 加藤寛之, 善本哲夫: "中国モジュール型産業における日本企業の戦略"赤門マネジメント・レビュー. Vol.3,No.2. 95-114 (2004)
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[Publications] Kuwashima, Kenichi: "Organizational Capability and Competitive Advantage in Pharmace utical Product Development"Annals of Business Administrative Science. 2(2). 21-28 (2003)
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[Publications] 桑嶋健一, 小由切宏之: "医薬品産業"日本の産業システム 第3巻 サイエンス型産業(NTT出版). 352-403 (2003)
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[Publications] 高橋伸夫: "経営の再生[新版]-戦略の時代・組織の時代-"有斐閣. 331 (2003)
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[Publications] 高橋伸夫: "虚妄の成果主義-日本型年功制復活のススメ-"日経BP社. 244 (2004)