2003 Fiscal Year Annual Research Report
放射性炭素測定の精密化による過去千年の太陽活動変遷の研究
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14340071
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
増田 公明 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教授 (40173744)
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Keywords | 放射性炭素 / 太陽活動 / 加速器質量分析法 / 宇宙線 / マウンダー極小期 / シュペーラー極小期 / 小氷期 / 気候変動 |
Research Abstract |
本研究は,加速器質量分析法を用いて樹木年輪中の放射性炭素(炭素14)の濃度を高精度で測定することによって,太陽活動が弱まったといわれる極小期を中心に,過去二千年の太陽活動の変化や太陽圏の磁場構造の変動を調べるものである。従来の研究により,太陽活動の変動の大きさに対する地表面における炭素14濃度の変動の割合が小さいことが明らかになり,信号の大きさに見合った測定精度が必要であることがわかった。そこで本研究では精度を上げることに重点を置いて試料調製と測定を行い,特にシュペーラー極小期とマウンダー極小期における炭素14濃度の微小な変動をとらえることを目的とする。 本年度も加速器質量分析法の高精度化を目指しながら,シュペーラー極小期とマウンダー極小期の試料の測定を行った。特に試料調製方法の改善を考慮しながら,名古屋大学で保有する加速器質量分析計とスイスETH/SPIの加速器質量分析計を使用することにより,それぞれシュペーラー極小期とマウンダー極小期について年輪中の炭素14濃度を1-2年分毎に0.3%程度の精度で測定した。 標準試料を用いた比較結果に基づいて,独自の測定ターゲット用グラファイト生成ラインを整備した。この新しい試料調製装置を用いることにより,独自の安定した方法でグラファイト試料を得られるようになり,精度の向上に寄与することができる。この新しい生成ラインの試験を行い,安定した性能が得られることを確認した。 解析方法に関しては,いくつかの周期解析や時系列データフィルタリングの方法を試みて,その特性を調べている。新たに得られたデータを加えてシュペーラー極小期の時系列データ(西暦1409-1551年)を周期解析した結果,主要な周期成分は11年であり,太陽活動と密接に関連していることが確実となった。この11年周期の成分は極小期の中心期間において弱くなっており,極小期の太陽活動メカニズムに何らかの示唆を与えると期待される。マウンダー極小期については,Stuiverらが以前測定した結果とほぼ一致した結果が得られ,地域効果による炭素14濃度の違いは,もしあるとしても誤差を超えるものではないことが明らかになった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] H.Miyahara: "Variation of the radiocarbon content of tree rings during the Spoerer Minimum"Proc.28th Int.Cosmic Ray Conf.. 7. 4139-4142 (2003)
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[Publications] K.Masuda: "Radiocarbon content in Japanese cedar during the Maunder Minimum"Proc.28th Int. Cosmic Ray Conf.. 7. 4143-4146 (2003)
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[Publications] 古澤秀樹: "太陽活動極小期における年輪中C炭素14濃度変動"名古屋大学加速器質量分析計業績報告書. XV(印刷中). (2004)
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[Publications] H.Miyahara: "Radiocarbon contents in tree rings during the Spoerer minimum"Nucl Instr.and Meth.B. (In press). (2004)