2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14340102
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
奥田 雄一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50135670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 竜司 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (00323783)
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Keywords | 超流動ヘリウム3 / フェルミ液体 / 弾性表面波 / 超音波 / 音響インピーダンス / 粘性率 / 横波 / 粘弾性体 |
Research Abstract |
異方的超流動体(超伝導体)に対して壁の存在は大きな影響を及ぼす。スピン三重項P波超流動体である超流動ヘリウム3ではコヒーレンス長程度の狭い空間に閉じ込めると、転移温度が低下する、B相よりも異方性の強いA相の安定領域が増大するなどその相図が大きく変わることが知られている。しかし壁近傍でのオーダーパラメーターがどのように変形されているか、狭い隙間中のA相B相はバルクで観測されているものと本当に同じものかなどの基本的問題に弾性表面波を用いた音波分光法で取り組んだ。 弾性表面波(surface acoustic wave, SAW)は固体表面に沿って伝播する弾性波で、平行な変位しか含まないSH弾性表面波は超流動ヘリウム3の実験には我々がはじめて用いた。その共鳴周波数を約70MHzとした。測定はパルス法で行い、伝播してくる表面波の減衰と速度を超流動ヘリウム3中で測定した。 超流動転移(Tc)、対破壊エッジ(Tpb)、スカッシングモード(J=2-の集団モード)との共鳴(Tsq)が見えており、SH弾性表面波が十分な感度を持っていることが確かめられた。スカッシングモードとの共鳴の温度付近で見られる実部の増加は、レベル交差による横波音速の増大による寄与と考えられる。興味深いことにこの増加は、横波の透過波を用いた音速の直接測定で予想される変化よりも2桁以上小さいものであった。先に音響インピーダンス測定と音速測定は等価と書いたが、この系ではそれが成り立っていないようである。ずれ振動する壁と結合しないことが超流動性の定義であることを思ってみれば、壁との運動量のやり取りで常流動成分以外に表面束縛状態などがどのように寄与するか興味深い。壁で抑制されたオーダーパラメーターの空間変化まで考えたミクロな計算と我々の横波インピーダンス測定の実験結果を比べることによって、p波超流動体特有の表面状態の存在を示すことが出きればと考えている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Y.Aoki, Y.Wada, Y.Sekimoto, W.Yamaguchi, A.Ogino, M.Saitoh, R.Nomura, Y.Okuda: "Application of Surface Acoustic Wave Sensors for Liquid Helium-4 and Helium-3"J.Low Temp.Phys.. 134. 945 (2004)
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[Publications] Y.Aoki, Y.Sekimoto, Y.Wada, W.Yamaguchi, R.Nomura, Y.Okuda: "Velocity and damping of the SH-SAW in normal liquid 3He"Physica. B329-333. 116 (2004)
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[Publications] Y.Aoki, W.Yamaguchi, Y.Wada, Y.Sekimoto, R.Nomura, Y.Okuda: "Acoustic properties of liquid 4He measured by Rayleigh-SAW"Physica. B329-333. 234 (2004)