2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14340102
|
Research Institution | TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
奥田 雄一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50135670)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 竜司 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (00323783)
|
Keywords | 超流動3He-B / P-波超流動 / 表面束縛状態 / 表面弾性波 / 横波音響インピーダンス / 対破壊 / オーダーパラメーター集団励起 |
Research Abstract |
超流動3Heはスピン・トリプレットのP波超流動状態に約1〜2mKで相転移する。秩序変数の超流動の波動関数は多くの自由度を有しており、多数の超流動相の実現が原理的に可能と言われている。しかし、不思議なことに現実にはBW-state(B相)とABM-state(A相)の二つ、磁場中でABMの変形であるA1相が実現しているのみである。この中で固体界面という境界条件に敏感なのは、BW-stateである。BW-stateでは、超流動の波動関数の壁に垂直な成分Δ_⊥(k)は、壁近傍で奇関数的に振舞う。すなわちΔ_⊥(-k)=-Δ_⊥(k)という性質をもつ。その結果、Δ_〃は壁の影響をほとんど受けないがΔ_⊥は壁からξの数倍にわたってバルクの値から大きく空間変化し、壁の直上でゼロになる。ここでξはコヒーレンス長で数十ナノメータの長さである。このように秩序変数が空間変化することのために、壁近傍ではP波超流動固有の表面状態が存在する。つまりギャップ内に状態密度を持つことになる。界面の条件が準粒子の衝突に対して鏡面的か非鏡面的かによって大きく変わるが、現実の系では非鏡面的であることを考慮すると、ギャップ内の状態がδ関数的ではなく、かなり幅を持って存在するところが特徴的である。これらのことは理論的にこそ予測されていたが、実験では技術上の問題で手付かずの状態になっていた。本研究において、壁の横振動の音響インピーダンスを適当な振動数を選んで精密に測定することにより、この表面状態の存在を明瞭に捕らえることができた。これは、実験前ではまったく予想しなかったことであるが、音響インピーダンスの手法が超流動3Heの表面状態の分光学的研究に有力であることを示しており、今後のこの分野の研究が進展することが期待される。
|
Research Products
(5 results)