Research Abstract |
少数キャリアー物質Ceモノプニクタイトには,比較的不安定な4f電子軌道と希薄キャリアーとの相互作用に基づく,新しい物理的現象が存在すると考えられる.本研究の目的は,この新しい物理現象についての認識を深めることにある.そのために,(1)CePの高圧下の磁気構造の中性子散乱による研究,(2)CePの高圧下の磁気構造と結晶構造との関連のX線回折による研究,(3)CePの高磁場下の磁気相図の放射光X線回折による研究を計画した. 上記の各課題については,昨年度までの研究により,それぞれ一定の成果をあげた.その中で,磁場下の磁気相図に関しては,SPring8における実験により,これまでの中性子回折による研究の上限である約6Tの磁場を超えて,8.5Tの磁場下までの領域における磁気構造について新たな知見を得ることができた.しかし,この実験では当初の目標であった現時点で技術的に可能な最高磁場15Tには到達できなかった.そこで本年度は,この最高磁場までの放射光X線回折の実験による磁気構造の研究にチャレンジした(理研播磨研の勝又グループとの共同).この研究は,Ceモノプニクタイドの特異な磁気構造には,特有の超格子変調が伴っているというこれまでの研究結果を利用して,中性子回折では研究の困難な高磁場下における磁気構造を,X線回折による超格子変調構造の観測結果から推定することを試みたものである.その結果,14Tまでの磁場下における実験に成功し,約8T以上の磁場で,新しく,Ce面で8枚ならびに9枚周期でΓ_8Ceの強磁性2重層が現れる磁気構造の存在が明らかになった.結局,昨年度までの研究と合わせて,本研究により,CePにおいては,磁場下において磁場の増大とともに,(Ce面で)11,10,9,8枚周期の磁気構造が系統的に現れることが明らかになった.この結果は,高圧下で圧力とともに,9,8,7,6,5,4,3枚周期の磁気構造が現れることと極めて類似しており,CePの特異な磁気的状態に対して,磁場が圧力と同等な役割を果たしているという興味深い事実を明らかにしたものと言える.
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