2005 Fiscal Year Annual Research Report
アジアモンスーン域の陸面熱・水収支と蒸発散特性の1次元陸面水文モデルによる解明
Project/Area Number |
14340142
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Research Institution | Independent Administrative Institution, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
山崎 剛 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究センター, サブリーダー (80220317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 克典 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境フロンティア研究センター, 研究員 (80344274)
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Keywords | 陸面熱・水収支 / 蒸発散特性 / 陸面モデル / タイガ / 熱帯 / 潜在応答特性 / 積雪水量 / 土壌呼吸 |
Research Abstract |
蒸発散の推定に重要な気孔コンダクタンスについて、植物生理生態の研究者によって得られた結果を陸面過程モデル(2LM)に適用した。北東アジア域のサイトについて、サイトごとに最適値を決めたパラメータセットと、すべてのデータをプールして決めた潜在的な応答特性を表す共通のパラメータセットの両方を試験したところ、両者はほぼ同等に水・エネルギーフラックスの季節変化を再現できることがわかった。ヤクーツクカラマツ林については、他の地域に比べて夏期の蒸発散が抑制されている。感度実験の結果、ヤクーツクのみでパラメータを決めると最大気候コンダクタンスが小さいために蒸散抑制が起きると解釈されるが、プールした潜在応答特性では土壌水分の低下による抑制とみなされることがわかった。 冬期過程に関して、ヤクーツクのカラマツ林とアカマツ林を対象として、1986-2000の森林内外の積雪、冠雪のシミュレーションを行った。常緑のアカマツ林の方が0.5〜1mm着水量が多い。これに対応して、厳冬期のカラマツ林の積雪水量は5mm程度アカマツ林より多い。最近の実測でも厳冬期にはアカマツ林が5〜7mm多い。なお、消雪に関してはカラマツ林の方が1より4日早く、積雪水量は融雪期に逆転する。林外を想定して計算した積雪水量は通常林内の1.3〜1.5倍であるが、ほとんど変わらない年もある。 植生土壌内の熱・水環境と土壌呼吸を再現するため、大気-植物-土壌間の蒸発散のモデルに土壌中二酸化炭素ガス・水溶液拡散過程と二酸化炭素ガス生成過程が考慮された。このモデルを乾季・雨季を伴うタイ北部常緑林に適用したところ、土壌温度・水分・二酸化炭素ガス濃度の鉛直プロフィールと土壌呼吸の観測結果がうまく再現された。このモデルを使った数値実験を大気-植生間の水蒸気ガス交換を左右する葉面積指数の値を変化させて行った。その結果、葉面積指数の増加は林床の純放射量を減少させ蒸散量を増加し、この減少と増加とが土壌温度と水分量をそれぞれ低下させ、これらの低下によって土壌呼吸量も減少した。この葉面積指数増加による土壌呼吸の抑制は乾季に大きく現れる一方、可能蒸散量が少なく土壌内水分量が降水によってほぼ決められる雨季では、土壌内の熱環境の変化による影響でしか土壌呼吸が抑制されなかった。
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Research Products
(2 results)