Research Abstract |
本年度の研究実績を,以下に箇条書きに述べる。 (1)重松紀生博士を,研究支援者として3か月雇用し,高圧型岩石変形実験装置を用い,カリ長石の単結晶変形実験を行った。その結果,温度800℃,歪速度10^<-5>/sの条件で,カリ長石が結晶内すべりや機械的双晶で変形することが明らかとなった。この条件は,天然の10^<-15>/s程度の歪速度に外そうすると,差応力数100bars,温度400℃程度に相当する。一方,カリ長石は変形実験により破壊もするので,この物理条件は脆性-塑性転移条件に相当すると考えられる。この結果は,天然ではこの程度の物理条件で,長石類が塑性変形を開始する事実を良く説明する。 (2)高知県本山町汗見川および愛媛県伊予三島市の銅山川の三波川変成帯緑泥石帯から採集された砂質片岩から,ジルコンを分離することに成功し,金沢大学助教授,長谷部徳子氏によりジルコンのフィッション・トラック年代が測定された。結果は,現段階では述べることは出来ないが,三波川変成帯に変成岩上昇以後の古第三紀の熱・造構エベントが記録されている可能性が示唆された。 (3)秩父帯北帯の砂質準片岩よりもジルコンを分離することが出来,現在,ジルコンのフィッション・トラック年代が測定中である。 (4)中央構造線近傍(愛媛県新居浜市)の三波川変成帯の地質調査を実施し,変成岩類上昇時に発生した,著しい地層の擾乱帯が発達していることが明らかとなった。特に,著しい正断層の発達と,その後の西北西-東南東の軸を持つ,北フェルゲンツの波長数10mの褶曲群の発達が明らかとなった。また,一部の石英片岩中には,微細粒石英集合体で示される,微小勇断帯が発達し,既存の石英c軸ファブリックが破壊され,ランダムになっていることが明らかとなった。おそらく,上昇時後期に石英片岩は,断層形成を伴う圧力溶解-沈殿クリープで変形したと考えられる。
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