2002 Fiscal Year Annual Research Report
進化パターンの普遍性と階層性-海の昆虫「貝形虫」からのアプローチ
Project/Area Number |
14340155
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
神谷 隆宏 金沢大学, 自然科学研究科, 助教授 (80194976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚越 哲 静岡大学, 理学部, 助教授 (90212050)
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Keywords | 進化 / 種分化 / 氷河性海水準変動 / 貝形虫 / 沿海 / 日本海 |
Research Abstract |
本年度の当該申請研究の実績は以下の点に集約できる。 潮間帯に生息する貝形虫類のうち、Cythere属、Xestoleberis属、Neonesidea属など南方の熱帯〜亜熱帯域に起源をもつ属の日本周辺での種分布を調査し、地理的分布を総括した。そしてCythere属については化石記録も含めて時空分布を明らかにした。その結果、次に示すような、沿海と氷河性海水準変動と種分化の関連性、すなわち重要な浅海種の進化機構のひとつがあきらかとなりつつある。第四紀のある間氷期に日本海に侵入した南方種は、次の氷期に寒冷化した日本海では一部の(突然変異により)耐性をもった個体(群)しか生き延びられない。これらは氷期に隔離された日本海の中で独自の個体群を確立し、黒潮系祖先種から種分化をおこす。この寒冷日本海種は次の間氷期には類似した水温条件となったオホーツク海へと北上する。この次の氷期になると海水準が低下したため日本海と隔離され、前と同様にオホーツク海で突然変異をおこした個体群が寒冷オホーツク海種として現れ、次の間氷期には親潮域へ適応する。こうして、Cythere属やXestoleberis属では第四紀という地質学的には短期間に黒潮域種が北上しながら次々と新種を形成し、北海道東岸の親潮域や千島列島、はてはベーリング海峡を越えてヨーロッパや北アメリカまで進出をはたした。この過程で日本海とオホーツク海のはたした役割を「沿海ポンプ効果」と名付け、このような南方種の北上にともなう種の進化が沿海に特有な現象であることを、同時期のアメリカ東岸、西岸では種の進化が生じていないことと併せて主張した。この成果は本年度の国際シンポジウム(COE)で発表され、また公表論文を準備中である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Smith, R.J., Matzke-Karasz, R., Kamiya, T., Ikeda, Y.: "Scottia brigida sp. nov. (Cypridoidea : Ostracoda) from western Honshu, Japan and a key to the subfamily Scottinae Bronstein, 1947"Zootaxa. 126. 1-20 (2002)
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[Publications] Motomura, H., Tsukawaki, S., Kamiya, T.: "A preliminary survey of the fishes of Lake Tonle Sap near Siem Reap, Cambodia"Bull. Natun. Sci. Mus., Tokyo, Ser. A. 28(4). 233-246 (2002)
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[Publications] Danielopol, D.L., Ito, E., Wansard, G., Kamiya, T., Cronin, T.M., Baltanas, A.: "The Ostracoda-Applications in Quaternary Research"American Geophysical Union, Washington, DC, U.S.A.. 313 (2002)