2003 Fiscal Year Annual Research Report
進化パターンの普遍性と階層性-海の昆虫「貝形虫」からのアプローチ
Project/Area Number |
14340155
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
神谷 隆宏 金沢大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (80194976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚越 哲 静岡大学, 理学部, 助教授 (90212050)
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Keywords | 日本海 / 北方適応 / 貝形虫 / 潮間帯 / 多様化 / 系統関係 |
Research Abstract |
浅海生貝形虫(甲殻類・節足動物)のひとつであるParadoxostoma属は、海藻を主たる生息場とし、世界中で多様化、繁栄するグループである。殻外形の特徴に乏しいこと、殻が薄く化石記録が他の分類群に比べ散点的であることなどから、日本周辺海域でまだ十分な分布・分類学的研究がなされていない代表的貝形虫として挙げられる。沖縄から北海道にかけて採集された潮間帯・潮下帯直下の141の海藻試料から、Paradoxostoma属66種を同定し、このうちの44種は未記載種であった。種の認定は雄性生殖器形態と殻外形・色などを総合して判断された。これら66種は雄性生殖器の基本構造に基づき5つのグループに分けられたが、このようなParadoxostoma属内の細分は初めての試みであり、複雑な属内の系統関係をうまく整理できる可能性が高い。同属の多様性は圧倒的に南方海域で高く、おそらく熱帯起源である同属が中緯度域まで分布を拡大してきたことがうかがえる。これら5グループのうち、Coniformeグループ(8種)とBingoenseグループ(3種)は中緯度域で多様化しており、形態の類似性から極近縁な関係にあると考えられる。Coniformeグループは日本海からオホーツク海、千島列島の親潮域に分布しており、逆にBingoenseグループは四国沖から東北日本太平洋側に分布している。北方親潮域に進出した種が太平洋周りでなく、日本海周りで分布を拡大してきたという結果は、昨年度までに研究代表者、研究分担者がXestoleberis属、Neonesidea属、Cythere属の分布に基づいて主張した「日本海ポンプ説(縁海ポンプ説)」をさらに強固に支持する重要な事例研究となった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Ishii, T., Kamiya, T., Tsukagoshi, A.: "Phylogeny and evolution of Loxoconcha(Ostracoda, Crustacea) species around Japan"Hydrobiologia. (in press).
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[Publications] Smith, R.J., Kamiya, T.: "The ontogeny of the entocytherid ostracod Uncinocythere occidentalis(Crustacea)"Hydrobiologia. (in press).
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[Publications] Smith, R.J., Kamiya, T.: "The ontogeny of Loxoconcha japonica Ishizaki, 1968(Cytheroidea, Ostracoda, Crustacea)"Hydrobiologia. 490・1-3. 31-52 (2003)