2003 Fiscal Year Annual Research Report
含鉄ケイ酸塩鉱物の溶解と先カンブリア時代の風化プロセス・速度
Project/Area Number |
14340159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 隆 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (00253295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小暮 敏博 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (50282728)
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Keywords | 先カンブリア時代 / 大気の進化 / 古土壌 / 風化 / 鉱物-水-大気反応 / 溶解速度 |
Research Abstract |
先カンブリア時代の大気中の酸素の濃度変化は、地球化学的課題のみならず、生命の進化と密接に関連し、近年盛んに研究が行われている。堆積岩中の安定同位体分析など様々なアプローチがなされているが、我々が対象としているのは古土壌(paleosol)と呼ばれる、当時の風化を受けた岩石である。しかし古土壌は風化後、例外なく続成・変成作用を受けた弱変成岩であり、当時の風化過程は未だに理解されておらず、従って、古土壌から推定される大気酸素の濃度は常に曖昧さを伴う。我々は当時の風化条件を室内で模擬し、実際の古土壌のデータと比較することで、当時の鉱物-水-大気の相互作用を明らかにし、大気酸素の濃度推定の基礎データにすることを研究目的をしている。 昨年度はバッチ式の溶解実験を行ったが、本年度は、速度論的な情報を得るため、酸素濃度が低い条件下で、いわゆるflow throughタイプの溶解実験が可能なグローブボックスの開発と、実際の実験を行った。この実験装置は、実験中の酸素濃度がモニターできること、溶解実験に必要な器具がすべてグローブボックス内に収納できること、また酸素濃度と二酸化濃度を任意に変化できること、が特徴である。鉄の含有量の異なる黒雲母と緑泥石、さらに白雲母の溶解を、この装置を使った非酸化的条件と、現在の大気にさらした酸化的条件で、比較実験した。非酸化的条件では、鉄(II)はSiと同様な溶解速度を示した。鉱物の溶解速度を表すSiの溶解速度は、非酸化的条件では酸化的条件より、3から4倍、早い、また、この溶解速度に鉄(II)は影響しないことがわかった。今回の実験結果は、大気中の酸素の濃度が低かった先カンブリア時代では、鉄(II)は風化システムの系外に流出し、かつ鉱物の風化速度が早かったことを示唆する。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Utsunomiya, S., Murakami, T., Nakada, M., Kasama, T.: "Iron oxidation state of a 2.45 b.y.-old paleosol developed on mafic volcanics"Geochimica et Cosmochimica Acta. 67. 213-221 (2003)
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[Publications] Murakami, T., Utsunomiya, S., Yokoyama, T., Kasama, T.: "Biotite dissolution processes and mechanisms in the laboratory and in nature : Early stage weathering environment and vermiculitization"American Mineralogist. 88. 377-386 (2003)
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[Publications] Murakami, T.: "Reactions in mineralogy"Japanese Magazine of Mineralogical and Petrological Sciences. 32. 161-164 (2003)
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[Publications] Kasama, T., Murakami, T., Ohnuki, T: "Accumulation mechanisms of uranium, copper and iron by lichen Trapelia involuta"Biomineralization : formation, diversity, evolution and application. 58-61 (2003)
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[Publications] Kasama, T., Watanabe, Y., Yamada, H., Murakami, T.: "Sorption of phosphate on Al-pillared smectites and mica at acidic to neutral pH"Applied Clay Science. (印刷中). (2003)