2002 Fiscal Year Annual Research Report
X線異常散乱法を用いた,ゼオライトに内包される遷移元素と有機分子の相互作用の解明
Project/Area Number |
14340161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 和正 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (40196762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 雅彦 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助手 (60249901)
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Keywords | Zn-Al-P-O系化合物 / 単結晶構造解析 / セオライト / 水熱合成 / 異常散乱 / 放射光 |
Research Abstract |
触媒および分子ふるいとしての機能を活用するため,骨格構造および細孔内部を化学的に修飾したゼオライトの研究開発が盛んである.ゼオライト結晶素材の特性発現メカニズムを解明するためには,修飾元素の分布を正確に把握することが不可欠である.本研究グループは,原子番号が隣り合う元素が共存する場合でも目的元素の構造情報を得ることができるX線異常散乱法をゼオライトの構造的研究に導入し,修飾元素の配列規則と細孔に挿入された有機分子との相互作用を解明するプロジェクトを立案した. 本年度は,強い白色X線源を有する高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設に,複雑構造の異常散乱実験を可能とする異常散乱単結晶構造解析装置を導入した.平成14年度後期のビームタイムを利用し,光学系の設定および積分反射強度の測定法など計画通りの性能が実現できていることを確認した.詳細な解析結果および4軸回折計との解析精度の比較などは,今後の解析を踏まえ評価しなくてはならないが,研究目的を遂行するための装置開発は予定通りに遂行できた。 また,コバルトおよび亜鉛内包ゼオライトを作製し,平均構造解析を行った.特に亜鉛系では,天然laumontite型骨格構造を有するZn-Al-P-O系ゼオライトおよび新規な骨格構造を有するゼオライトの育成に成功した.しかしいずれの結晶も,遷移元素は骨格構造に含まれており,本研究の遂行には骨格構造および空隙構造など狙った空間に遷移元素を分布するゼオライトを育成する技術を確立させることが不可欠である.一方,今回合成に成功したlaumontite型Zn-Al-P-O系ゼオライトは,内包する有機分子との相互作用が強いため,有機分子の変化に対応して空間群が変化する特性を示すことが判明した.本研究成果は,遷移元素および有機分子の相互作用によって非線形光学特性を発現させる可能性を見出したものであり,今後この応用分野へも研究展開をも視野に入れつつ系統的な合成実験を進めたい.
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