2002 Fiscal Year Annual Research Report
多核・多量子NMR分光法による揮発性成分を含むケイ酸塩メルトの構造
Project/Area Number |
14340163
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
神崎 正美 岡山大学, 固体地球研究センター, 助教授 (90234153)
|
Keywords | NMR分光法 / マグマ / 局所構造 / 揮発性成分 / 高圧 / 多量子NMR / ラマン分光 |
Research Abstract |
初年度は増設アンプを備品として購入し既設のNMR装置に付加した.これによりNMR測定できる核種が増えた.また多量子NMR測定が可能となった. CaO-MgO-SiO_2-H_2O系での含水ガラスを内熱式ガス圧装置で合成して,^1H,^<29>Si NMR分光法で調べた.この種の天然の玄武岩に近い組成の系はこれまで全く調べられてこなかった.これらの結果によると水を加えても重合度はほとんど変わらないことが^<29>Si NMRから示された.一方^1H NMRからはHが一部はH_2Oとして,一部はOH基として存在していることを示した.またピークの化学シフトからOH基の一部はMgやCaと結合していることが分かった.従来H_2OはSi-O-Si結合を切断すると考えられてきたが,今回の結果はMgやCaとも反応することを示している.これは重要な発見であり,この場合にはメルト構造は重合する.本実験ではOHはSiともMg, Caとも反応するため,解合と重合が競合していることになる.これは^<29>Si NMRにおいて重合度がほとんど変化しないことと一致している.したがって本研究により,解合と重合とが共存するという含水メルト構造の新しい面を見いだしたといえる. Na_2O-SiO_2-硫黄系においては^<29>Si及び^<23>Na MAS NMR法およびラマン分光法によりそのメルト構造変化を調べた.硫黄の添加により,ネットワーク構造が重合することがNMRおよびラマン分光法から示された.これは硫黄がメルト中のNa_2Oと反応し,Na_2S+Na_2SO_4を作るためだと推定された.つまり硫黄がNa_2Oをメルトから取り去るため,残されたメルト構造は重合化する.一方硫酸塩(Na_2SO_4)としてメルトに加えた場合には,メルト構造が解合することがNMR法から示された.これはNa_2SO_4がNa_2O+SO_3に分解し,Na_2Oがメルト構造を解合したと考えられる.このように硫黄はメルト中で多様な種として存在し,複雑な振る舞いをすることが示された.
|