Research Abstract |
本研究は新しい電気材料としての物性を有する化合物の合成を目指したものである。結晶構造化学的な考察の結果から,強誘電性などの物性に要求される結晶の動的ゆがみは,XO_4正四面体型ユニットとMO_6正八面体型ユニットが頂点共有により連結したネットワーク構造をもつ場合に発現される可能性が高いとの予想のもとに研究を行った。今年度は,合成的に有利であるとの判断から,Xとしてリンを選び,かつ,金属イオンMとリンとが1:1で含まれている化合物に焦点を当て,その合成を中心に研究を行った。このような条件を満たす化合物の中で,組み合わせの多様性が最も富むのは,Mが4価,5価の金属イオンの場合,すなわち,一般式A_xM^<IV>_xM^V_<1-x>O(PO_4) (Aはアルカリ金属イオン)で表されるような化合物であり,このような組み合わせについて系統的に合成実験を行った。M^<IV>としては,Ti, Zr, Ru, Mn, Nb, M^VとしてはNb, Tiを選び,どのような組み合わせにおいて目的組成の化合物が生成するかを調べたところ,AとしてK, Rb, Cs, M^<IV>としてTi, Nb, M^<IV>としてNb, Taを用いた場合,一連の同型化合物が得られることがわかった。これらのうち,いくつかの化合物については,すでに合成の報告があるが,報告とは異なって,必ずしもxが0.5の場合に単相が得られず,A, M^<IV>, M^Vの組み合わせに特有の特定の値の場合にのみ単相が得られることが判明した。また,M^<IV>=Mnである化合物はすべて新化合物である。これらの化合物の誘電率を調べたところ,M^V=Nbの化合物において,500K付近で誘電率,誘電損失に異常が見られた。これはアルカリ金属イオンのトンネル中での動きに結びついている可能性が考えられ,現在検討中である。また,ニオブ4価イオンを含む化合物では,半導体的電気伝導性が確認された。
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