2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14340223
|
Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
酒井 健 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (30235105)
|
Keywords | 水素エネルギー / 太陽光エネルギー / ビオローゲン / 人工光合成 / 分子デバイス / ナノデバイス / ルテニウム錯体 / 白金錯体 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き光増感部と白金錯体触媒部を連結する部位に導入するためのビオローゲンナノワイヤー構築用の白金錯体ワイヤー素子の研究開発を進めた。今年度は、昨年度までに合成法の確立に成功したメチルビオローゲン誘導体を側鎖に有するピラゾレート配位子を用い、ナノワイヤー構築用のビルディングブロック、及びそれを基盤としたワイヤー錯体の合成を試みた。また、従来の研究を受け、ビオローゲンで修飾した白金錯体については、その光化学的水素生成触媒機能の評価も行った。ピラゾレート架橋骨格にて白金一次元ワイヤーが合成可能であるか否かについて検証することを目的とし、未修飾のピラゾールを有する白金一次元ワイヤーのモデル化合物の合成と構造決定も行った。その結果、テトラキス(ピラゾール)白金錯体とジクロロ(2,2'-ビピリジン)白金との反応から、ピラゾール配位子系としては初めての直鎖状三核錯体の合成と結晶構造解析に成功した。これにより、ピラゾール架橋骨格にてナノワイヤーが合成可能であることが確認された。結晶構造解析により、二つの白金原子にはさまれた中心の白金原子は比較的強い電子間反発を有するため、三核錯体ユニット内のPt-Pt距離(3.48Å)は、以前代表者らが報告済みである類似構造の二核錯体内のPt-Pt距離(3.23Å)に比べて長いことが分かった。他方、ビオローゲン含有ピラゾール配位子(MV-pzH)を、cis-位に二つ有する錯体として、cis-[Pt(NH_3)_2(MV-pzH)_2](PF_6)_6及びcis-[PtCl_2(MV-pzH)_2](PF_6)_4の合成に成功した。それに加え、二核錯体とし、[Pt_2(bpy)_2(μ-MV-pz)_2](PF_6)_6の合成と同定にも成功した。この他、テトラキス体や、さらに長鎖のワイヤー錯体の合成も試みたが、目的物の創出には至らなかった。しかしながら、合成したこれらの新規白金単核及び二核錯体について電気化学測定及びEDTAを犠牲還元試薬とする水からの光水素発生系(EDTA/Ru(bpy)_3^<2+>/methylviologen)での機能評価を行った結果、cis-PtCl_2部位を有する白金単核錯体においては、従来最も水素生成触媒活性が高いとされていたアセトアミド架橋白金二核錯体をしのぐ、高い活性が見出された。水素生成の初速度から見積もった光反応の量子収率は40%と高い値を示した。このような高い水素生成触媒効果は均一系ではこれまでに達成例がなく、白金コロイド触媒とほぼ同等に有効な触媒と言える。しかも、触媒における白金原子の使用効率は、均一系錯体触媒の方が格段に有利であり、今後本系の有用性については、さらに検証の必要性がある。なお、本年度は、目的とするナノワイヤー構築用のビルディングブロックを開発するに留まったが、次年度以降には、これらの前駆体を用い、ペプチド合成用固相合成樹脂を基盤として、白金ナノワイヤーの新しい逐次伸長法の研究開発を行う予定である。
|
Research Products
(8 results)