2004 Fiscal Year Annual Research Report
ポルフィリンとシクロデキストリンとからなる超分子化学の創製
Project/Area Number |
14340224
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Research Institution | DOSHISHA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
加納 航治 同志社大学, 工学部, 教授 (60038031)
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Keywords | 超分子 / ミオグロビンモデル / パーメチル化シクロデキストリン / 水溶性鉄ポルフィリン / 可逆的酸素捕捉 / 酸素親和性 |
Research Abstract |
今年度はヘモグロビン(Hb)やミオグロビン(Mb)モデルの構築について集中的に検討した。MbのX-線結晶解析の結果を見ると、酸素を可逆的に結合するプロトヘムIXはたんぱく質であるグロビンの表面部分に存在し、それでいてポルフィリン鉄中心はバルク水層からは隔離されていることが分かる。この構造がMb機能発現には非常に重要であると思われる。この構造ゆえに鉄ポルフィリンの二量化が抑制され、かつFe(II)-O_2結合へのプロトンあるいは水分子の攻撃による自動酸化を防いでいる。これまで有機溶媒中のHb(Mb)モデルは作られているが、水中でのモデル化の例はない。我々は今回、水溶性ポルフィリンである[tetrakis(4-sulfonatophenyl)porphinato]iron(III)(Fe(III)TPPS)をプロトヘムIXの代替とし、2つのパーメチル化β-シクロデキストリを、ピリジンを含むリンカーでつないだグロビンモデル(CD2)を用いてMbモデル系を構築した。Fe(III)TPPSはグロビンモデルとしてのCD2に非常に強く包接された。この包接錯体をmet-hemoCDと呼ぶ。このものを水中でナトリウムジチオナイトにより還元するとFe(II)TPPS-CD2包接錯体となり、これをhemoCDと呼ぶことにした。hemoCD水溶液に酸素ガスを導入すると酸素分子はFe(II)に配位し、oxy-hemoCDを与えた。oxy-hemoCD水溶液に一酸化炭素ガスを導入すると、酸素が一酸化炭素に容易に置き換った。oxy-hemoCDの生成は吸収スペクトル、^1H NMRスペクトル、および共鳴ラマンスペクトルの測定から確認された。oxy-hemoCDはpH6のリン酸緩衝溶液中で非常に安定であり、25℃における半減期は35時間であった。さらに酸素親和性を示すパラメータのP_<1/2>はpH7.0,25℃で17.5Torrであり、人ヘモグロビンのT-stateよりも小さな値を示し、適度な酸素親和性を示した。 これまで単純な人工系で、水中においてヘモグロビンあるいはミオグロビンの機能を再現するモデル系は全く知られていなかった。我々の今回の系は非常に特異なモデル系であると思われる。proximal histidineの代替としてピリジンを用い(合成化学的な理由)、かつ水溶性ポルフィリンに極めて強い親和性を示すパーメチル化β-シクロデキストリンをグロビンモデルとして用いることで、ポルフィリンFe(II)中心を水中でありながら、非常に疎水的な環境に置くことが出来たことが、水中での酸素捕捉の成功につながったものと思われる。実用的にはさらに単純なモデル系を構築することが望ましく、種々検討を行ったが、今回のhemoCD構築に用いられた基本的な考え方の1つでも満たさない場合には、全くoxy-hemoCDに相当する酸素付加体は生成しなかった。今後の課題として、イミダゾールをproximal baseとするモデル系を構築し、酸素親和性を高めることが必要と思われる。
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Research Products
(6 results)