2002 Fiscal Year Annual Research Report
放射光励起STMの開発と元素分析・スピン観察への応用
Project/Area Number |
14350016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 幸雄 東京大学, 物性研究所, 助教授 (80252493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 太一 東京大学, 物性研究所, 助手 (80313120)
木下 豊彦 東京大学, 物性研究所, 助教授 (60202040)
江口 豊明 東京大学, 物性研究所, 助手 (70308196)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 内殻励起 / 放射光 / 元素分析 |
Research Abstract |
現有の走査トンネルユニットを利用して、それに対応しかつ放射光ビームラインのスペースにフィットするような除振システム・超高真空システムを立ち上げ、放射光照射下かつ超高真空下でSTM像が観察できるシステムを開発した。放射光施設内は電気的ノイズ・振動ノイズの点でSTMにとって必ずしも適した環境ではないが、除振対策・電気ノイズ対策を十分に取ることにより、放射光ビームライン取り付け時におけるシリコン清浄表面(Si(111)7x7構造)の表面原子像を取ることに成功した。また、シリコン表面上でSTM像観察中に放射光を照射した際、シリコン2pの準位に相当するエネルギー(102eV)を境にして、探針で検出される光誘起電流量が大きく変化することが観察され、実際にシリコンの内殻励起による電子がSTM探針により検出されうる可能性を示すことができた。従来、X線管を用いた場合に比べ光のエネルギーを絞ったにもかかわらず100倍以上の電流が検出されており、放射光を用いることにより光強度が格段に増強されたことや光吸収断面積の高いエネルギーの光を選択できることが、検出感度の格段の向上に寄与しているものと考えられる。 現在、正確に、光誘起の電流量を測れるようSTM測定系の改良・開発を進めており、このシステムによりさらに定量的な解析が行うことができると期待している。またこうした測定と同時に、光誘起電流の検出範囲を絞るべく、ガラスコート探針の作成技術も開発しており、超高真空対応で試料表面を汚染することのない被服探針を作成している。今後、この探針を用いて光誘起電流による元素分析の分解能評価を進める計画である。
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