Research Abstract |
本研究では,直感的操作が可能な遠隔手術システムの構築を目指し,本年度次のような研究実績をあげた. ハードウェアの高性能化として,独自開発している球面ディスプレイの高精細化,血管縫合などマイクロオペレーションを正確かつ安全に実現するスレーブマニピュレータの改良を行った.基本機能の改善・強化として,カルマンフィルタを用いた予測提示による正確な視覚レジストレーションの実現,対象物からの反力の正確な帰還に基づく力覚レジストレーションの実現を行った.特に,力覚提示装置の6自由度化により,ひねりなどのモーメントの提示が可能となった.また,操作者(術者)の頭部位置姿勢に基づく周りから覗き込む機能の構築においては,デバイスの高性能化とプログラムの改良を加え,レベルアップを図った.さらに,高速・高性能コンピュータの採用によりシステム全体の処理の高速化を図った. さて,具体的な縫合の場合,組織内に針が刺通するに従って,針が見えなくなることで視覚情報のウエートが低下し,代わって刺通抵抗が増すことで力覚情報のウエートが増大する.しかし,術者にとって,力触覚情報と視覚情報の両者が重要であることから,複合現実感の技術を使い,実画像に仮想針を重ね合わせた.仮想的に針を透視した形となり,組織内の針の動きが確認でき,力覚との整合も取れ,直感的操作が可能となった. また,遠隔力覚臨場感手術システムの重要な機能として,術前利用の手術シミュレータの構築も行った.具体的には,幾何・物理モデリングならびに位相変形を伴う切断・刺通モデリングのアルゴリズムを構築し実装した.なお,仮想下での操作も,開発したマイクロドームシステム上で行える形を採っている.さらに,インタラクティブな手術シミュレーションを狙っており,リアリティおよびリアルタイム性のトレードオフを重要視した.さらに,微妙な操作感覚について検討するために,触覚センサ内蔵のソフトフィンガの開発を行った.このソフトフィンガにより,ダメージを受けやすい臓器の把持などへの応用を期待する声があった. 医師による操作性・作業性の評価としては,プロトタイプとして基本的な性能は備えていること,また,医療分野で力触覚提示の重要性が高まるなかで,本システムの発展性が大いに期待される.
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