Research Abstract |
平成14年度は,室内と屋外の環境における基礎的な温熱生理・心理実験と,理論的な考察に主点を置き,世界の二大指標であるISO-7730のPMV指標と,ASHRAE(米国暖冷房空調学会)の基準であるSET^*指標の長所・短所を整理し,二つの指標の改訂に向けての基礎資料を得ることを最大の目標とした.室内標準風速(0.15m/s)・椅座・裸体において,等しい温熱感(温冷感スケールTSV≒+2.5)を申告したときの,気温と湿度の組み合わせを求めた実験データの分析の結果,等しい暑熱感を示す等温感線の微係数が,湿り空気線図の上で全てマイナスの値を示し,かつ,低温環境に移行するほど,その値が小さくなることがわかった(持田・〓原・窪田・長野).また,屋外における夏服と冬服の着用実験からも,ISO-7730は指標としては屋内の使用に問題がある一方,SET^*指標は,著者らが提案した有効放射温度を日射の項に組み込み,屋外においても使用を可能にする方策を見出した(〓原・堀越・持田).また,温冷感と密接に関わる平均皮膚温については,その算定式が温感評価に大きな影響を及ぼす為,実験と考察によって,新しい平均皮膚温式の提案を目指した.実測は,立位と椅座状態でサージカルテープを体表面に貼付し,その面積を計測した.有効伝熱体表面積のデータ分析を行った結果,両姿勢とも,腋窩部を中心とした上腕部と躯幹部との接触と,下肢部・手指・足趾同志の接触,手部を置いた体表部との接触が,伝熱面積とはならない体表面となる知見を得た(松原).さらに,着衣時における等温感線の解明実験と検討の一環として,次の二つの実験を行った.暑熱時に着衣に吸着する汗量の推定するために,綿製の試験布に汗を染み込ませ,試験布の電気抵抗の変化を測定した.その結果,汗量と電気抵抗が線形の関係を示すことを確認した.次に,実際に暑熱環境に曝露した被験者に,綿製のシャツとパンツを着用させ,発汗時の着衣表面の湿り度合いを赤外線カメラで撮影し,同時に電気抵抗を数カ所で測定した.その分析結果から,着衣に吸着した汗量と,実際の汗量(着衣の重量変化)が良く一致することを確認した(垣鍔).
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