Research Abstract |
フラーレンナノウィスカー(FNW)は,C_<60>及びC_<70>などのフラーレン分子が重合して出来た結晶性のナノ繊維(フラーレンナノファイバー)であり,本研究代表者が2001年に世界で初めて見出した物質である.FNWの構造と性質が明らかになるにつれて,工学・薬学など広い分野への応用が可能になると期待される.本年は,透過電子顕微鏡によるFNWお呼びのC_<60>ナノウイスカー(C_<60>NW)焼結体の構造解析と電気的,機械的性質についての研究を行い,さらに,C_<60>NWの非線形電気伝導特性を利用した高周波フィルターの作製に着手した.まず,C_<60>とC_<70>をトルエンに溶解させて飽和溶液を作り,これに,イソプロピルアルコールを静かに加えてC_<60>/C_<70>飽和トルエンが下部,イソプロピルアルコールが上部となる液-液界面を作り,数日から1ヶ月室温にて静置させて,C_<60>/C_<70>ナノウィスカーを成長させた(液-液界面析出法).また,ヨウ素をイソプロピルアルコールに溶解させて,C_<60>飽和トルエン溶液とヨウ素添加イソプロピルアルコールの液-液界面を作り,同様にヨウ素ドープC_<60>ナノウィスカーを作製した.C_<60>NWバルク焼結体は,C_<60>NWを金カプセルに充填し,超高圧プレス装置を用いて,5.5GPa,600℃の条件で加圧焼結することにより作製した.透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果,FNWにおいて,C_<60>/C_<70>分子が成長軸方向に最密充填構造をとるようにポリマー化していることが分かった.C_<60>ウィスカーの直径は,約80nmから数マイクロメートルであり,数百マイクロメートル以上に成長する.また,C_<60>の誘導体として,C_<60>[C(COOC_2H_5)_2]飽和トルエン溶液とイソプロピルアルコールの液-液法により,C_<60>[C(COOC_2H_5)_2]分子から成るナノウィスカーを作製した.これは,C_<60>誘導体からなる1次元重合体を作製した世界初の例であり,液-液法によって多様なフラーレンナノウィスカーが作製できることを示した.C_<60>NWは直径が小さくなるにつれて導電性が向上するという異常な性質を示した.C_<60>NW焼結体は,常温常圧のC_<60>分子結晶粉末の同じ条件(5.5GPa,600℃)の焼結体に比べて,4桁も低い電気抵抗率を示した.
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