Research Abstract |
複数の物質から構成される複合材料を溶射すると,成膜過程における熱力学的に不安定な物質の分解が懸念される.しかし,反応性溶射では,インプロセス反応によって熱力学的に安定な化合物を、生成するため,希望する(生成)複合皮膜の形成に極めて効果的である本研究において,本年度得られた主な成果は以下の2項である: (1)Al合金基材の表面被覆として,代表的な固体潤滑剤(黒鉛)を含む鋳鉄に着目し,前焼鈍した黒鉛を含む粉末の溶射皮膜,プラズマフレームによって黒鉛化焼鈍した皮膜,CH_4を用いてインプロセス黒鉛化を図った皮膜,さらに,hBN粉末を複合化して固体潤滑剤を増量した皮膜を形成した.また,高Si-高Al-高P鋳鉄粉末の溶射では,黒鉛化は容易になるものの,単に溶射した皮膜には黒鉛晶出が認められない.黒鉛を含む鋳鉄溶射皮膜は,黒鉛の析出量が普通鋳鉄並でマトリックスが非常に硬いため,鋳鉄溶射皮膜の耐摩耗性は,遠心鋳造鋳鉄よりも著しく優れている. (2)Al-40wt%Si-10wt%Mg合金粉末をDCプラズマ・RFプラズマ溶射,HVOF溶射によって皮膜形成をした.その皮膜硬さは,HVOF, DC, RFの順になる.皮膜断面組織のち密性も硬さと同順である.加えて,HVOF溶射では皮膜の加工硬化,RFプラズマ溶射では飛行溶滴温度が高くMgの蒸発が皮膜硬さを低下させる.一方,Al-Si-Mg合金粉末にSiO_2微粒子を複合化した溶射材料では,インプロセス反応によってMgAl_2O_4など強化相の生成が期待できる.最も硬い皮膜はDCプラズマ溶射によるものであり,HVOF溶射では低温高速フレームのためインプロセス反応が進行せず,一方,RFプラズマ溶射では高温低速フレームのため溶射材料中の強化に寄与するMgの蒸発が硬さの低下原因である.
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