Research Abstract |
常温において高圧窒素ガス中に六弗化硫黄液を円形ノズルから噴射すると,噴射液の表面が臨界混合状態に近くなり,表面張力が非常に小さくなることを利用し,微小重力実験において低速噴射で高ウェーバー数流れを実現し,乱流微粒化で問題になる噴射液の不安定化と液糸の分断を模擬する過程を高速度ビデオカメラに撮影して調べた.高速度ビデオ画像を新たな手法で画像処理し,噴射液の分断特性を解析した結果,分断波長が噴射液の先端が表面張力によって収縮するときに作られる表面張力波の最大波長にほぼ一致することが見出された. この興味深い発見を理論的に基礎つけるため,噴射液の軸対称な時空間的な発展を支配する一次元方程式を誘導し,数値シミュレーションを行った.その結果,「液体の分断が次の液体の分断を引きこす不安定波をつくる」ことがあきらかになった.この知見は従来の微粒化理論を塗り替える内容を持った新しい知見であり,原理を要約すれば以下の通りである.(1)噴射液が分断すると,新たに生成された噴射液の先端部に働く表面張力によって,噴射液の先端がノズル方向に一定速度で収縮し,その際上流に向かって表面張力波が放射され,噴射液は表面に凸凹がある状態になる.(2)噴射液表面の凸凹の存在は,噴射液と周囲気体の間に速度差があるとき,凸凹に応じた変動ガス圧の作用を生み,一部の表面張力波を不安定波に転化させ,下流に流下する不安定波を形成する.この効果は,気液速度差に基づいた気体ウェーバー数がO(1)以上になると有意に効き,乱流微粒化で現れる液糸の分断は,この機構によっていると考えられる.また,流下する間に特定の波長の不安定波が卓越して成長するため規則的な分断が起きる. このように表面張力波が分断に大きくかかわっていることがあきらかになったので、その実験的検証を得るために,前方からストロボフラッシュで噴射液を照射し,噴射液の正確な表面形状を撮影する技術を開発した.
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