Research Abstract |
クロタラリア属植物に関するこれまでの研究成果を生産現場へ展開する基盤を確立するために,1)特に『クリーニング性』に着目し,塩類集積土壌から有機物として回収した養分の畦外圃場における肥料分としての利用の可能性と,2)すき込み(緑肥施用)後の腐熟期間における他感物質等の生成による雑草防除の可能性について,より精密な定量的評価を行うことを目的とした.本年度の研究実績の概要は下記の通りである. C. anagyroides, C. incana, C. mucronataの3種を供試して,これらを利用する際に重要な時期別の生育特性と緑肥としてすき込んだ後のコムギの生育と窒素吸収の関係を明らかにすることを試みた.採種用に生育させた供試3種の生葉を採取し,細断して,300ml容ポットに充填した土壌に生体重で約10gを混合した.さらに,試料をすき込まず,硫安を成分で0.15g (N-0.15施用区),0.03g (N-0.03施用区)施用する区と無施用区を設けた.コムギ(農林61号)を播種し,ガラス室内で栽培した.C. mucronataは,供試3種の中ですき込み試料とした生葉の全窒素含有量が最も多く,C-N比が最も低かったことから,速やかに分解することが予測されたが,播種後54日目におけるコムギの乾物重と全窒素含有量は,C. incana区で最も大きく,C. mucronata区で最も小さかった.しかし,54日目の土壌の硝酸態窒素含有率は,C. mucronata区で最も高く,C. incana区で低く,すき込み直後のコムギの窒素吸収には,分解の遅速以外の要因が影響する可能性が示唆された.コムギの窒素吸収に特徴的な影響がみられたC. incanaとC. mucronataを,株間15cm,条間15cmで移植し,経時的に地上部を採取して諸特性を調査した.C. mucronataは主茎の伸長と茎径の増加が,C. incanaは分枝の発達がそれぞれ著しかった。地上部の乾物重と全窒素含有量は,C. mucronataが有意に大きく,C-N比,リグニン含有率およびL-N比は,いずれもC. mucronataが有意に高かった.
|