Research Abstract |
クロタラリアに関するこれまでの研究成果を生産現場へ展開する基盤を確立するために,塩類集積土壌から有機物として回収した養分の畦外圃場における肥料分としての利用の可能性と,すき込み後の腐熟期間における他感物質等の生成による雑草防除の可能性について,それぞれ明らかにすることを目的とした.3年目にあたる16年度の研究実績の概要は下記の通りである.九州,四国地域でセンチュウ対抗植物として導入が試みられているC.brevifloraの緑肥利用特性を調査した.圃場で栽培したC.brevifloraを10月中旬に刈取り,地下部を残して圃場外に搬出する区(R区)と地上部と地下部をともにすき込む区(S区)を設けた.すき込み後33日目にコムギを播種し,地下部に蓄積する窒素のコムギへの貢献度について評価を試みた.各区から経時的に採取した土壌溶液の無機態窒素含有率は,S区,R区ともに,刈取り直前に比べて刈取り直後には一時的に減少し,その後増加し,その増加程度は腐熱期間中(すき込み後約30日間)ではR区で,腐熟期間後ではS区で大きかった.コムギの生育は初期からS区で優った.C.brevifloraすき込み地上部のコムギによる窒素回収率は最高分げつ期において26%であった.また,コムギの全窒素含有量に占めるすき込み地上部由来窒素の割合は68%,窒素固定由来の窒素の割合は32%であった.一方,R区における地上部の全窒素含有量はS区の54%を示し,本種の地下部に蓄積された窒素の後作コムギへの貢献度が必ずしも小さくないことが示唆された.なお,腐熟期間における雑草の発生の抑制がS区で認められた.さらに10月10日に採取した葉と茎について,前15年度と同様の実験手法を用いて窒素の無機化について調査したところ,炭素残存率の減少程度は葉で大きく,窒素残存率の減少程度は,茎では埋設初期に大きく,葉では埋設期間を通して小さかった.これらのことから,C.brevifloraをすき込んだ場合には,すき込み直後には,有機物の分解にともない微生物バイオマスへ土壌中の窒素が取り込まれ,微生物とコムギとの窒素の競合である窒素飢餓が生じる危険性が示唆された.
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