2003 Fiscal Year Annual Research Report
カプサイシン類似,非辛味成分を生成する新しいトウガラシの生産と機能性食材の開発
Project/Area Number |
14360021
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
矢澤 進 京都大学, 農学研究科, 教授 (90026550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大東 肇 京都大学, 農学研究科, 教授 (80026583)
渡辺 達夫 静岡県立大学, 食品栄養学部, 助教授 (10210915)
伏木 亨 京都大学, 農学研究科, 教授 (20135544)
橋爪 秀一 森永製菓株式会社, 研究所, 理事(研究職)
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Keywords | トウガラシ / CH-19甘 / カプシノイド / 成分育種 / 脂肪代謝促進 / カプサイシン類似物質 / 体熱産生物質 / 生理機能性物質 |
Research Abstract |
本研究は、研究代表者の矢澤が育成した無辛味で発汗作用のあるトウガラシ'CH-19甘'に含まれる新規物質カプシノイドの政恵理作用および'CH-19甘'の果実生産、利用について行ったものである。得られた成果は以下のように要約される。 1.果実の収穫適期の決定について、有効成分カプシノイドは果実が赤くなると急激に減少することを明らかにした。その含有量は開花数24〜30日で最も高くなること、収穫後室温では1週間でほぼ半減する。しかし、5℃で貯蔵すると数か月間はカプシノイドの含有が減少しないことを明らかにした。また、カプシノイドは胎座の表皮細胞でのみ生成されることを明らかにした。 2.栽培方法は兵庫県、栃木県の生産農家の協力を得て、施肥基準、病害虫防除基準などの栽培管理方法を確立し、現在10a当たり1200〜1400kgの果実収穫が可能となった。 3.カプシノイド高含有品種の育成については、これまでの育成系統のほぼ3倍量の系統が得られた。 4.カプシノイドの動物(ヒトを含めた)に対する生理・機能的効果について、呼吸ガス分析では'CH-19甘'果実を摂取したヒトでは、摂取後20〜50分で測定前よりも著しく上昇すること、鼓膜温は摂取によりかなり上昇することを認めた。これらの結果からカプシノイドを多量に含むトウガラシ'CH-19甘'の摂取はヒトでの体熱産生を亢進させることが明らかとなった。 5.カプシノイドの生合成経路について、^<14>CO_2を用いた葉からの取り込み実験結果から、カプシノイドはフェルラ酸を経てバニリン、バニルアルコールが脂肪酸と縮合することが明らかとなった。また、カプシノイドの人工合成法を確立した(この論文は日本農芸化学会の優秀論文賞を受賞した)。 6.トウガラシ'CH-19甘'の茎葉部に強いラジカルを産生阻害作用をもつ物質が含まれることがマウスマクロファージ細胞(RAW264・7細胞)を用いた検定で明らかになった。またHL-60細胞(ヒト白血病細胞)を用いて、'CH-19甘'の茎葉に強いO_2産生抑制を示す物質の存在が明らかとなった。 7.カプシエイトのマウスへの投与により、UCPs(uncoupling proteins)のm-RNAレベルが上昇し、体内の炭水化物および脂肪の酸化が高まることを認め、副こう丸などの臓器脂肪が減少することを明らかにした。 8.トウガラシの軟弱用野菜として栽培方法に関して、施肥、収穫基準、生産環境条件の設定などの諸条件を決定し、その栽培化技術を確立した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] S.Yazawa, H.Yoneda et al.: "A new stable and available cytoplasmic male sterile line of capsicum"Capsicum and Eggplant Newsletter. 21. 52-55 (2002)
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[Publications] K.Kobata, M.Kawaguchi, T.Watanabe: "Enzymatic synthesis of capsinoid by the acylation of vanillyl alcohol with fatty acid derivatives catalyzed by lipases"Biosci.Biotechnol.Biochem.. 66. 319-327 (2002)
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[Publications] T.Iida, T.Moriyama, K.kobata, T.Fushiki, S.Yazawa, T.Watanabe et al.: "TRPV1 activation and induction of nociceptive response by a non-pungent capsaicin-like compound, capsiate"Neuropharmacolgy. 44. 958-967 (2003)
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[Publications] K.Iwai, A.Yazawa, T.Watanabe: "Roles as metabolic regulators of the non-nutrients, capsaicin and capsisiate, supplemented to diets"Proc.Jpn.Acid.. 79B. 207-212 (2003)
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[Publications] Y.Masuda, T.Watanabe, S.Yazawa, T.Kawada et al.: "Upregulation of uncoupling proteins (UCPs) by oral administration of capsiate, a non-pungent casaicin analog"J.Appl.Physiol. 95. 2408-2415 (2003)
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[Publications] 古旗賢二, 渡辺達夫: "リパーゼ反応を利用したカプサイシン類の合成"科学と工業. 76. 171-180 (2002)
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[Publications] 矢澤 進(編著): "図説野菜新書"朝倉書店. 260 (2003)